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カランカランと小さなベルの音が響いた店内には小さな机が4つとバーカウンターがあり、よく見れば全て1人用であることが見てとれた。



ベルの音で来客に気づいたのだろう。
誰もいない店内で静かにグラスを磨いていたバーテンダーが顔を上げた。

ぱっちりとした二重で吸い込まれそうな瞳とさらりとした茶髪。
いらっしゃいませと言う声は柔らかく別人だと分かっていてもどこか悩みの種になっている彼の人の面影を感じ、照史は自然とバーテンダーの目の前のカウンターに腰をおろした。



座ったはいいが先ほどまで居酒屋で飲んでいたこともあり酒を飲みたい訳ではない。
かといって初めて入ったバーでノンアルコールドリンクを頼むのもマナー違反だろう。

そう思いアルコールであまり回らない頭を悩ませている照史にバーテンダーが声をかけた。


「もしかしてどこかで飲まれた後ですか?」


「ああ、はい。バーに来といてあんま酒の気分やなくて」



申し訳なくなりながらそう伝えるとバーテンダーは目元を優しく緩ませた。

ああ、笑うと目尻に皺ができるのも彼に似ている。


「よくあることなので大丈夫ですよ。」


その声も優しげで思わず安堵のため息が零れた。



そして出されたグラスの中にはミネラルウォーターが注がれており、少なからず酔っている自分には丁度いい。


出身はどこか、いつもどんな酒を飲んでいるのか、当たり障りのない会話を続けていくうちにバーテンダーが不意に問いかけた。



「もしかしてなにかお悩みですか。
自分でよければお聞きしますよ。

それに、この店はあなたみたいな方のためにあるのですから。」



照史はその質問に胸がドキリと音を鳴らせた。
普段なら例え酔っていたとしても男が好きなんだなんてカミングアウトしないだろう。
しかし、このバーテンダーなら話してもいいと、何か変わるかもしれないと思えて仕方なかった。

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作者名:そると | 作成日時:2022年3月20日 19時

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