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side:橙



背中の服が引っ張られるのと同時に肩あたりが濡れる感覚。
恐る恐るって言葉がピッタリなぐらいゆっくりした動作に甘え慣れてないのが表れとる。

倒れるぐらい頑張って、ようやく吐き出せた大切な人を労るように、安心できるように。
濱ちゃんが頭を撫でているから、俺は背中をぽんぽんと叩く。


そうやっているとぐっと肩が重くなって引っ張られていた感覚が無くなる。
すーすー、と深くてゆっくりな呼吸でまた寝落ちたのが分かる。
起こさないようにそーっと横たえて布団を肩まで掛けてやる。



「寝た?」
「おん、ぐっすり」
「いや〜、まさか淳太の泣き顔が見れるとはな〜」
「感動してならわりと泣いとるけどそれ以外やと滅多にないもんな」
「出会ってもう20年近いけど全部ひっくるめても数回?」
「相方の俺でもそんなもんやなぁ」


でもまあ、


「淳太くんの泣き顔はあんま見たないわぁ」
「せやな。俺洗い物しとくわ」
「俺やるで?」
「ええよ淳太の傍に居ったり。ついでにシャワー借りるわ」


そう言ってさっさと部屋を出ていく濱ちゃんを見送って、ベッドサイドに腰掛ける。
穏やかな表情はまるで赤ちゃんみたいに純粋。
今思えば、最近見ていた表情はどこか思い詰めたような、余裕のない表情ばかり見ていた気がする。


以前雑誌のインタビューか何かで寝てる時は赤ちゃんみたいで愛おしいって淳太くん言ってたよな。

その時はちょっと分からんかったけど今なら分かる。
愛おしいって言葉がパズルのピースが合わさるようにしっくりくる。


頼りになって、時折頼りなくて、真面目で頑張り屋の大好きな人生の相方。
お疲れ様。ゆっくり休むんやで。

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作者名:そると | 作成日時:2022年3月20日 19時

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