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side:橙
楽屋では意識が朦朧としながらも微かに反応を見せていた淳太くんも病院に着いた時には頬を軽く叩いても荒い息を繰り返すだけ。
無理やり起こすのも可哀想で、横抱きにして診察に連れていった。
歩く振動に合わせて力なく揺れる腕は記憶よりも細く見えて。
「先ほど連絡した中間ですけど」
「はい、中間さんですね。待合室だと大変でしょうし、先にベッドのある部屋にご案内しますね」
「ありがとうございます」
濱ちゃんが通路の受付で名前を言うと、俺を、正確に言うと俺の腕に力なく抱かれとる淳太くんを見て優しそうな看護師さんがそのまま別室に案内してくれた。
いくら軽いとはいえ50kg以上の意識がない人を抱えるのは体力を使うのでありがたい。
診察室に案内され、淳太くんをベッドに寝かせる。
病院独特の白さと相まって心なしか車の中よりも顔色が悪く見え、淳太くんの冷たい指先をぎゅっと握りしめる。
「先に体温を測っておいてください」
「はい。淳太脇ひやっとするで〜」
「先生はこの部屋に参りますので、そのままお待ちください」
「分かりました、ありがとうございます」
看護師さんが退室し、部屋には淳太くんの荒い息と俺たちの呼吸だけ。
どこか落ち着かず、濱ちゃんを見ると不安そうな顔。
俺も負けず劣らず不安そうな顔しとるんやろなぁ。
「体温計全然鳴らんな」
「濱ちゃんちゃんと挟めてないんちゃう？」
「いや、それぐらいできるはずや！多分」
「いや自信ないんかい！」
静かな空間に耐えられなくなって声を出せば、いつものテンポで会話が進む。
張り詰めていた空気が軽くなって2人で静かに笑いあっていると、沈黙していた体温計もようやく音を出して測定終了のアピール。
濱ちゃんが体温計を引き抜くのとほぼ同時に先生も来てくれた。
「お待たせしました。体温は測れましたか？」
「今鳴ったところで、よ、40.3、です」
「よんじゅ…！？」
「高いですね、点滴で解熱剤を入れましょう」
40℃超えとか聞いた事ないで。
大丈夫やんな？淳太くん。
先生の指示で看護師さんがテキパキと動き出す。
点滴や採血の針が刺さっても目を覚まさない。
「食事や水分を戻してしまったりしましたか？」
「いえ、それはないです」
「あ、あと俺たち2時間のライブした後で、淳太は水分取れてないです」
「ふむ、脱水の可能性もありますね。そちらも点滴で対応します」
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作者名：そると | 作成日時：2022年3月20日 19時
