1.虎馬編 ページ1
「新しく入荷したこのカラー、明るくてオススメですよ。
試してみます?」
「・・・。」
「あっ…これは好きじゃなかったですか!?」
鏡の前で俯いてしまった女性客に慌ててヘアカラーのサンプル表をパタンと閉じて覗き込む。
彼女の弧を描いたような薄い唇からププッと息が吐き出されて、思わず首を傾げてしまった。
「…好きだよ、その色。」
「…じゃあなんで?」
「いや違うの、キュヒョンくんったら・・―、
私が初回で指名したとき、暗い色の髪色してるときに彼氏に酷いフラれ方したからトラウマだーって話したこと、、まだ覚えてくれてるんだなぁと思って。
だから明るい色ばっかり勧めてくるんでしょ!」
「えぇ、まぁ…だって―、いつも笑ってたいじゃないですか。
あなたの彼氏が浮気したことと、あなたの髪色が暗かったことは統計学的に考えても関係ないとは思いますけどね。」
でもだからって、それで俺の指名客がトラウマを思い出して笑顔を失うのは嫌なんです。
「その色も、優しいキュヒョンくんも好きだよ!」
「はいはい…、今の彼氏とは上手くいってるんでしょ。
今回のヘアカラーもきっと似合ってるって褒めてくれると思いますよ。」
「ありがとう。私、不安だったけどキュヒョンくんを指名してホント良かった。
いつも自信が湧いてくるようなヘアスタイルにしてくれるから…、実は、キュヒョンくんが勧めてくれるなら
暗い色にチャレンジしてみてもいいなぁ〜ってちょっと思ってるし。」
「それじゃあ冬がきたら、暗い色にしてみましょう。
似合いますよ、絶対。」
「そっかぁ、もう秋だもんね。」
そう、秋ですよ。
季節はもう、秋なんです―。
あの人は―、今も笑っているのだろうか。
ヒチョルさんの隣で。
お揃いの指輪を嵌めて。
伸びた髪を撫でられて、微笑んで。
なぜだろう。
君を想うと泣けてくるのは。
―秋だからかな?
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作者名:私 | 作成日時:2017年12月2日 20時