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時は流れ、いつの間にか文化祭が迫ってきていた。
いよいよみんなの気合も一段と高くなり、作り物のペースも上がっていった。
「何とか間に合いそうだね」
「そうだね。あ、瑛一、一緒にお店回ろうよ!」
「うん!回ろ!」
Aさんとパンフレットを覗き込みながら、各クラスの出し物を眺める。
満場一致で決まったのは音楽室で行われる軽音部のライブ。
どんな感じなんだろうね、と二人で話していたら、急に後頭部にデコピンされた。
「こらー!ちゃんと仕事しなさーい!」
振り向くと、舞子さんだった。
「わ、許して舞子ちゃん」
「許さん!真面目なAが作業さぼって瑛一といるとか許さん!」
きゃあきゃあと目の前で戯れる、仲良さげな二人。
…良い。めっちゃ良い。
「何お前見つめてんだよ」
「うわ律いつの間に」
「普通にいたわ。お前も仕事しろ。終わんねぇよ」
僕もへらへら笑いながら作業に戻ろうとして、ふと目が合った。
帆立くんと。
彼はただ僕らを見ていて、僕と目が合った途端、避けるように再び作業に取り掛かった。
そうだ、僕はまだ何もしていないんだ。
良い切り口が見つからないけど、もうそろそろ話してみないと。
男になれ、瑛一。
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作者名:稲穂 佳子 | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2019年3月15日 15時