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Aさんはなかなか戻ってこなかった。帆立君も。
舞子さんや真也くんは、時間がある度、僕の様子を伺ってくる。気にかけてくれるのがありがたかった。けど、僕は自分の気持ちすらも管理できない大ばかやろうだから、舞子さんたちに何も言えなかった。
ついに、一日目が終わった。
いつの間にか、Aさんの荷物は消えていて、あぁ、僕の知らない間に帰ってしまったんだ、なんてぼんやりと思った。
心のどこかでうっすらと思ってた。
瞬きをして、次に目を開けた時、Aさんが目の前にいるんじゃないかって。それで、謝ってくれて、これまでの経緯を話してくれて。それで仲直りをして、今まで通りくだらないことを話し始めるんだ。
けど、そんなの訪れなかった。
1日目の文化祭をみんなが楽しんで、そして2日目を楽しみに下校する。
僕もその人たちに混ざりながらただ1人で下駄箱に辿り着いた。
何の気なしに下駄箱を開いて、それから心臓が跳ね上がった。そこには、手紙があった。
ひったくるようにそれを掴み、開く。表に差し出し人は書かれていなかったが、これはあの人からの手紙だと直感で分かっていた。
書かれていた事は、僕が想像していたものと半分合っていた。
Aさんよりヘタクソで、僕よりかは上手い字は、紙の真ん中に3行ほど書かれていた。
明らかに分かる、帆立君の字。
――今夜、君と話をしたい。12時に君の部屋で。
ふん、カッコつけやがって。僕はそれを無造作に鞄の中につっこんだ。
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作者名:稲穂 佳子 | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2019年3月15日 15時