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僕は作業していた手を止めて、ため息をついた。
今週から文化祭ウィークで毎日6時間目は準備に割り当てられる。
クラスの文化祭係を中心として、みんなで手分けをして装飾をしたり看板を描いたりする。
ふとAさんを見る。いつも通りの様子のAさんがそこにはいた。
舞子さんや真也くんなんかと楽しそうに話していて、それはまさに日常のワンシーンだった。
「瑛一、お前ちゃんと仕事しろ」
「あっごめんて律」
律に戒められながらも教室の反対側を見ると帆立くんがやたら女子に囲まれながら作業をしていた。
夕凪くーん、と馴れ馴れしく女子に呼ばれては笑っている。
その様子には違和感はなく、それに少し安堵する。
いつ僕は帆立くんにアクションするべきなんだろう。今は文化祭の時期だし忙しいから、本当に相手が行動を起こしてくるとも限らない。それに、見当違いの事を僕が言ったりしたら逆効果だろう。
ということで、僕は今すぐ何かをするというのはやめた。あくまでこれは勇退であって、しり込みしたわけじゃない。
「お前マジ大丈夫?なんか最近おとなしくなったよな」
「前はもっとヤバかった?」
「うん。きちがい一歩手前、ってかんじだったけど今は萎れてる」
「そこまで言います…?」
僕は手にしていた絵の具の染み込んだ刷毛を振った。
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作者名:稲穂 佳子 | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2019年3月15日 15時