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早朝。テレビ番組のほぼ全てを占領するのは決まってニュース番組である。
本日の天気についての予報から。何処のプロヒーローがどんな事件を解決したか。プロヒーローが犯した失敗。目出度い話から不幸な話まで。その他諸々。幅広いジャンルの情報を直ぐに伝達するのがニュース番組だった。朝のニュースを見るという行為は人々の私生活の一部にもなっていると言っても過言ではないだろう。そんな何時もと変わらない日常の一コマ内で、"女優のスキャンダルにてキャスト変更""ピンチヒッターのおかげで視聴率がうなぎ登り!?""代役が本当の主役だった!?"と大きく取り上げられていたニュースのことをAは何故か今思い出していた。
もしかしたら。
ああしていたら。
こうだったら。
ありもしない"タラレバ"が浮かんでは沈む。たった一つのボストンバッグに詰め込まれた荷物を抱え、流れゆく都内の景色を高速バスの車内で見送りながらAは溜息を吐き捨てた。二酸化炭素に塗れるバス構内。振動の合い間に時折、聞こえるのは少し離れて座る同乗者達の話声だった。
＊ ＊ ＊
父から轟との婚約解消を告げられてから数日が経った今日。直ぐにこの男は行動を起こしたのだ。初めから用意していたかのように手際よくAを実家のある都内から追い出したのだ。体感的な時間で例えるならば、"一瞬"だった。
あの日。あの書斎室で。最後に父と分類される肉親から吐き捨てられた、
"……それとお前には別の男を用意している"
"明後日、この男の元へ嫁いでもらう"
という言葉にAの視界は色を失った。自身の体温が低下する音が木霊する。それはあまりにも鋭利で酷く重たいものだった。最早、問いかけですらない。そんな命令文にAは頷くことしか出来なかった。逆らうことすら出来ずにただ己の与えられた道しか歩めない惨めな自分に吐き気を覚えたが、直ぐにその異物を呑み込んだ。
現在、そんなAは新たに宛てがわれた義母が選んだとされる男の元へ嫁ぐべく地方行きの高速バス内で揺られていた。煙草や消臭剤の混ざった独特な匂いが広がる車内。通路を挟んで向かい側の席に座る母と娘が仲良さげに笑いあっているのを横目に何もかもが泡となってしまった彼の事。卒業式やその約束をしていた友人達のことを思い出していた。
彼女の父は学費とは別に生活費を月々数十万円と振り込むだけの親だった。それをAは無駄遣いせずにこつこつと貯めていた。そして、貯蓄から数週間後に控えていた卒業式の為に袴をレンタルで用意をしていたのにAは身につけることすら許されなかったのだ。
続く (更新停止中)
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あの - 初コメ失礼します！タイトルをみて どんなんかな？ と思い開けてみたら、物凄い文才が‼出来ればそちらの文才を分けt((( 凄い尊敬しております！応援しています！ (2021年11月11日 17時) (
レス) @page5 id: 347eae7089 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - コメント失礼します。砂時計様の文章がとても好きで、このお話を読んで思わずコメントしてしまいました。三人称視点で書かれた文や私では到底思い付かない説明の仕方、描写、表現に思わず何度も読み返してしまいました。更新頑張って下さい、応援しています、、！！ (2021年11月10日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：砂時計
| 作成日時：2021年10月4日 21時
