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｢A。お前と焦凍君の婚約は今日で解消だ｣
刹那、落胆というよりかは納得という感情が西条院Aの胸の中を駆け巡った。
大学卒業間近という時期に久しぶりの実家へ呼び戻されたAへ向けられた羅列は予想していた範囲内の言葉でもあった。父親と称する男が決定事項として並べた言霊がAの耳を貫く。突きつけられた現実は予想通りのもので、涙なんて可愛いものは微塵も出なかった。そのかわり、脳裏に浮かんだのはプロヒーローショートとして活躍する元婚約者となった彼の映像だった。
冷えきった廊下とは違い、暖房がよく効いた書斎室に父とA、2人分の二酸化炭素が塗れていく。己の身体を巡る血液は生温い。が、Aの心情は酷く冷たいものだった。
＊ ＊ ＊
"西条院"これは己という存在の価値を証明するモノであり。"A"とは、上記の西条院に付加価値として付け足された"もの"である。
何十年とヒーロー社会を裏から支えてきた大手サポート会社グループを経営し続けこの社会に古くから根づいているのがうち。西条院家であった。現在、父がそんなグループ会社。全てを含めた組織の社長として君臨している。そう。西条院Aは金持ちのご令嬢というカテゴリーに分類される人物だった。
しかし。Aが中学時にその当たり前としていた現実は一変した。元々、儚かった母が他界したのだ。そして1年も経たずに父は愛人と再婚した。Aに1歳年上の義姉が出来た。元々、家族仲が良好だったわけでもなかったが母を蔑ろにする。その良心の無い行為にAはショックのあまり言葉が出てこなかった。
だから、何も言うまい、と。自分は西条院家の令嬢として十分な教養を身につけ、轟焦凍の元へ嫁げば父も満足してくれるのだと言い聞かせ全てに蓋をした。
だが、悪夢の始まりはそこからだった。
それまで西条院家で令嬢として十分な扱い受けてきたAだったが義母と義姉の推奨で直ぐに家から離れた中高大一貫の女子校へと編入させられた。もちろん実家から通うのは遠いからと逃げ道を塞がれて、寮にまでいれられた。
それ以降、何かしらの集まりがある時でさえ家へ戻ることは許されなかった。唯一、帰れたのは新年の祖父が主催するパーティーのみだった。中学当時は何故？と理解出来ずに1人泣いていたのだが数年も経てば義母と義姉にとって邪魔者であるが故に全てを奪われ、追い出されたのだろう。と、嫌でも悟った。
だからAの生きる目標は奪われなかった権利でもある2歳年上のヒーローを目指す轟焦凍の元へ嫁ぎ、寄り添い遂げることだけだった。
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あの - 初コメ失礼します！タイトルをみて どんなんかな？ と思い開けてみたら、物凄い文才が‼出来ればそちらの文才を分けt((( 凄い尊敬しております！応援しています！ (2021年11月11日 17時) (
レス) @page5 id: 347eae7089 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - コメント失礼します。砂時計様の文章がとても好きで、このお話を読んで思わずコメントしてしまいました。三人称視点で書かれた文や私では到底思い付かない説明の仕方、描写、表現に思わず何度も読み返してしまいました。更新頑張って下さい、応援しています、、！！ (2021年11月10日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：砂時計
| 作成日時：2021年10月4日 21時
