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ただただ過ぎ去る日々。流れるような青い空に白い雲。ひんやりとした冷えた風が肌を突き刺し、ヤワヤワと撫でる。そんな揺蕩う日々の中、息を吸う行為がこんなにも苦しいものだったことを日彩は初めて知った。酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す。ただそれだけの行為が酷く重く、苦しいものだったなんて彼女は知りもしなかった。寧ろ、知りたくなんてなかった。
寝ても醒めても。食事をしても。
どれだけ早く一日が過ぎ去ろうと、受験勉強へと勤しんだ所で胸の奥に残った爪痕はじくじくと彼女の心臓を蝕み続ける。化膿したそこは触れることすら出来ないほどに酷く傷んでいた。
轟に想い人が居ることを知り、逃げて。
轟とヒーロー科の女子、八百万百が二人で話している所を見て、逃げて。
中庭で彼らを見かけたあの日から更に2週間が過ぎ去ろうとしていたこの頃。日彩は轟焦凍という人物自体を避けるようになっていた。が
｢ねぇ。A。こっちに"また"、A組の轟君来てるよ？｣
何故かそれ以降、逆に轟との遭遇率が上がった気がしていた。否、確実に上がった。同じクラスの友人が浮かべる好奇な視線が言の葉と共に自身の体を貫く。先週から頻繁に顔を合わせるようになった轟に彼女は困惑していた。ほぼ毎日と言っていいほど何処かしらで相見える彼の火傷跡が存在を主張している。
カチリと目が合えば必ずと言っていいほど声を掛けられる。と、脳が経験談から予測を組み立て声にならない溜息を吐き出す。今日も今日とて。日彩Aの薄い灰色に轟焦凍の赤と白がよく映えた。
｢ぁ、ちょっと私トイレに行くね｣
｢え！？A？？｣
今回は次の授業が移動教室ということで友人と二人並んで廊下を歩んでいた所に目の前から轟がやって来たのだ。きっと彼らも移動教室か何かがあるのか。または、あったのか。どちらにせよ黒色の艶やかな髪を靡かせる八百万と共に轟はAの前方に現れた。
友人の声に対して反射的に顔を上げた日彩は灰色と緑色を見せる視線と頭上に並ぶ黄色に何故か居心地の悪さを覚えた。そして直ぐに踵を返し取って付けたような言い訳を並べ、轟の視線から逃れるべく来た道を走った。
失恋した挙句、長年好意を寄せている相手の花園を目撃して耐え抜く程の力量をAは未だに持てずにいた。遠くで友人の声が響きパタパタと自身の足元から高音が続く。
実るはずの無い恋を未だに引きづり回す己に羞恥を覚える。諦めろと蓋までしたのにじわじわと溢れ返るそれ。窓ガラスに反射して覗く涙でぐちゃぐちゃになった自身の顔。
嗚呼。私はまだ轟焦凍に恋をしているんだ。
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吹雪 - なんかとてもすごいお話でした…！(語彙力がなくてどう伝えればよいのか…)この作品ずっと前にみはじめて、完結を楽しみにしていました！ (2022年8月21日 11時) (
レス) @page13 id: ad117a8b13 (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - 蒼音さん» いつもお話を読んで下さり、また沢山のご感想をコメントしてくださりありがとうございます。私が表したかった、人の欲深い感情を読み取っていただけてとても嬉しく思っております。あと少しで完結ですので宜しければ最後までお付き合いお願いします！！ (2021年10月24日 22時) (レス) @page11 id: 2bb1ee999a (このIDを非表示/違反報告)
蒼音 - 今まで、ライバルがいたり悲恋だったりするお話は読んでいて辛くて苦手だったのですが、この作品は辛いけれどそれだけじゃなくて、リアルな心情の描写があって、ついのめり込んでしまいました！笑更新されてないか何度も確認しに来ちゃいます笑更新楽しみにしてます！ (2021年10月18日 21時) (レス) @page11 id: 9c4579ad78 (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - かほさん» いつもお話を読んで下さり、またコメントまでありがとうございます！！続きを求めるお声を頂けて本当に本当に嬉しい限りでございます。あと少しで完結ではございますが、何卒最後までお付き合いの程、よろしくお願いします！！ (2021年10月3日 16時) (レス) @page10 id: 2bb1ee999a (このIDを非表示/違反報告)
かほ(プロフ) - いつも楽しく作品を拝見させて頂いてます！凄く続きが気になります！更新頑張ってください！ (2021年9月30日 16時) (レス) @page9 id: 325c7d0f3b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：砂時計
| 作成日時：2021年9月18日 23時
