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｢とりあえず、私の部屋でもいいかな？ここでは言いづらくて…｣
遠くで蝉の叫び声が轟く。
噎せ返るような夏の暑さのせいで背筋をツウっと汗が伝う。
クラクラするような熱帯夜。先輩の夜色を見上げた刹那、私へと向けられたその問いかけに脳がはっと、その真意をぶち当てた。
静まり返る放課後の廊下で周りを見渡し、何かを憂うような表情で言葉を告げる夏油先輩。
瞬時に頭の中で思考を繰り返し脳が答えを挙げる。もしかして夏油先輩はそういった恋とか愛とか、恋愛とかのお話がしたいのでは！？と自身の中に潜む乙女としての好奇心が膨れ上がる。
喉が渇いて飲み水を欲する。胃が空っぽのせいで飢えを覚える。そんな曖昧な表情を浮かべる夏油先輩の問いかけに大きく頷きながらイエスの応えを述べた。
たしかにここでそれは恥ずかしい。声に出さない言の葉が心の中に木霊していく。辺りを見渡しながら先輩の視線を追いかける。
いつ死ぬか分からない。そんな世界で生きて歩く呪術師達。なら、今この瞬間、生きているうちにやりたいことを成しておかないと死んでしまった後では後悔するかもしれない。そのうちのひとつに恋愛は含まれていても別に良いだろう。
うんうん、と己の中で導き出した結論に対して頷きながら夏油先輩の歩幅を追いかけると古びた木材が歪な音を呟いた。
｢どうぞ｣
"散らかっていて、すまないね"
申し訳なさを含んだその言葉が案内された室内に響いて、消えていく。綺麗に整理整頓された夏油先輩の私生活が垣間見える室内へと促されるままに足を踏み入れた。
自分の部屋とほぼ変わりのない間取りに家具。
ぶっちゃけ、はっきり言うと女である私の方が部屋が私物で溢れ返り散らかっているだろう。
先輩の女子力の高さを目の当たりにしたせいで複雑になった心境をなんとか宥めながら、
｢…ちなみに先輩、お願いとは？｣
先輩の呟きに、そんなことは無いです、と訂正をいれつつ本来の目的である"お願い"へと触れる。
自身の口から吐き落ちた文字列が地面へと落下していく姿を見下ろしながら耳に届く蝉の声を拾う。付けたばかりの冷房の生ぬるい風が肌をやんわりと撫で付け、ヌメリとした後味を残す。
机の上からひとつ。透明の液体が入った小さな瓶を選びそれを片手に私へと向き直る先輩の前髪が大きく揺れ動いた。
｢実は、私も惚れ薬に興味があってね｣
｢A。私と一緒にこれを飲んでくれないかな｣
一滴の雫がこぼれ落ちたせいで水面が波紋を描く。
先輩の吐き出された言葉のせいで自身の脳が混沌とした様子を描いた。
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うさ - 続きがとても気になりますo(^o^)o (2021年7月13日 15時) (
レス) id: c396716e54 (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - こいみさん» コメントありがとうございます。この度は私の作品を読んでくれてありがとうございますっ！！こいみちゃんにそう言って貰えてとても嬉しいですっご期待に添えられるように頑張ります！！お付き合いの程お願い致しますっっ (2021年3月25日 12時) (レス) id: 3e29fdde61 (このIDを非表示/違反報告)
こいみ(プロフ) - こんばんは、コメント失礼します。砂ちゃんのお話が本当に大好きです。夏のお話書いてくれて、すごく嬉しいです!!更新楽しみにしてます、頑張ってください!! (2021年3月23日 23時) (レス) id: 5a5862897c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：砂時計
| 作成日時：2021年3月7日 19時
