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「亜島さん。最近、夏油さんと仲良いよね」
「ん!?へ!?!そう、かな?」
好きな人なんて居ない。
なんなら、惚れ薬を盛ってやろうと思う人物すらいない癖に物珍しさと神秘的なものへの興味心で夏油先輩と契約を交わした私、亜島Aに疑問を投げかける灰原君の声が3人しか居ない広すぎる教室内に響いた。
開始の時刻が過ぎたにも関わらず現れない教師を隣に三席一列という形で並べられた席に大人しく座ったまま待ち続けること数分。
いっこうに現れない教師に痺れを切らしたのだろう。不意に灰原君の声が室内をハイジャックした。
遥か彼方。遠くの方で叫び声のようなものが轟く廊下とは似ても似つかないほどに酷く落ち着いた教室内にそれは木霊していく。
開けっ放しにしていた窓から映える白色と青色の混ざったそれを見上げていた私はなんの脈絡もなくいきなり投下された問いに驚きのあまり裏返りかけた声を押し殺しながら答えを記した。
「最近ずっと一緒に居るじゃないですか」
「そうそう!!あの夏油さんと!羨ましいなぁ」
生ぬるいまとわりつくような風が自身のアイボリー色の髪の毛を攫っては、突き放す。
自分から見て灰原君の更に奥に座る、別に興味無いと言わんばかりの態度の七海君も前者に続き言葉を紡いだ。
3人のそれぞれの声色が飛び交い、混じり合う。
まだまだ来る気配のない教師の姿を横目に見下ろしつつ2人の並ぶ顔へと視線を這わせる。
脳裏にここ最近よく見るようになった先輩の黒色を思い描いては直ぐに消した。
「そうなのかな。お菓子とか貰うだけだよ」
昨日もね、生クリームたっぷりの大福を貰ったよ。美味しかった。なんて感想を付け加えながら帰宅途中の出来事を伝えると、ぽつりぽつりと″餌付け″という単語が2人の口から漏れた。
その零れ落ちた単語に対して脳が肯定の意見を口にする。
先輩が後輩を甘やかす。そんな図式が組み立てられたおかげで疑問だったこの距離感にも納得することが出来た。
机の上に並べられた真っ白なノートと文具達を見下ろしながら2人にもこんど貰ったらお裾分けするねと付け足すと、嬉しそうに顔を緩める灰原君と明らかに入りませんという苦そうな表情を作る七海君。2人の描いたコントラストに笑いが溢れてしまった。
「あ…!」
だだっ広いグラウンドの上を五条先輩と並んで歩いている先輩の姿を自身の暗めの色の目が捉える。先輩の持つ黒色がやけにはっきりと目に映えた。
夏はもうすぐ目の前に。
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うさ - 続きがとても気になりますo(^o^)o (2021年7月13日 15時) (レス) id: c396716e54 (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - こいみさん» コメントありがとうございます。この度は私の作品を読んでくれてありがとうございますっ!!こいみちゃんにそう言って貰えてとても嬉しいですっご期待に添えられるように頑張ります!!お付き合いの程お願い致しますっっ (2021年3月25日 12時) (レス) id: 3e29fdde61 (このIDを非表示/違反報告)
こいみ(プロフ) - こんばんは、コメント失礼します。砂ちゃんのお話が本当に大好きです。夏のお話書いてくれて、すごく嬉しいです!!更新楽しみにしてます、頑張ってください!! (2021年3月23日 23時) (レス) id: 5a5862897c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:砂時計 | 作成日時:2021年3月7日 19時