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乱れをみせる呼吸。じくじくと痛みを感じ始める横腹。家の冷え切った廊下で酸素を吸い込み、二酸化炭素を撒き散らす。
真夏の夕刻時に太陽の日差しを浴びながら全速疾走をしたせいか身体の全てから汗が滲む。
額に張り付いた前髪を振り払いながら脳裏に残る先程の会話も掻き消す。
いきなり現れた棘君から逃れるべく雪崩るように自宅へと走って帰った。
落ち着け、落ち着くんだ。
何度も何度も己の身体に言い聞かせるように言葉を繰り返すも去り際に見た彼の酷く冷たい横顔が頭の中をハイジャックしているせいで何もかも全てにおいて落ち着けない。
彼へ向けて書き殴った“大っ嫌い“という言葉が何度も何度も脳の中でリピートを繰り返す。
少しだけ高くなった身長。黒色の高専の制服を着用していた棘君の姿。1年ほど前と比べ伸びた髪の毛。声変わりをして低くなったあの声色。自分よりも強ばった手。
彼の全てが酷く懐かしく思えた。
胸の奥底から込み上げてくるような何かを必死に抑え込みながら深呼吸をする。
昔は、彼の後ろ姿を見かける度にその小さな背中を追いかけていたほど棘君のことが好きだったはずなのに。
世の中は、無惨で残酷で、歪なものだなと渇いた笑みがこぼれ落ちる。静寂が広がる廊下に自身の苦い笑い声が呑み込まれていく様を見下ろす。
棘君も、親の駒としてしか息が吸えない私も大っ嫌いだ。
家という見えない鎖が自身の体に巻き付き己を支配するその様をただ見つめることしかできない私が嫌だ。
この常峰家に産まれたからには、私にしか出来ない使命を全うしようと思って生きてきたのに何故かこの人生に抗いたいと思ってしまう自分が居ることに思考する脳が驚く。
ドクドクと未だに脈打つ心臓を宥めながら自分に与えられた部屋へと向かうべく重たいスクールカバンを片手に広い廊下を突き進んでいた、刹那、
｢…A。遅かったな｣
｢と、う…さま｣
自身の進行方向から歩いてきた父親に声をかけられた。まるで、私の帰りを待ち構えていたかのように言葉を綴るその男に視線を這わせる。
まさか、棘君と会っていたのがバレたのだろうかと、何故か彼のことを心配するかのように脳が声を上げる。
静寂の中に広がる冷たい冷房の風と自身の呼吸音が重なり合い、交差する。
｢明後日だ。明後日、例の男と見合いをしてもらう｣
一瞬で現実へと身体が引きずり降ろされる。
昂りをみせていた彼への感情が一気に冷気を帯びた。
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砂時計(プロフ) - くるいばなさん» この度は、私のお話を最後まで読んでくださり、またコメントまでありがとうございます。くるいばな様のお心を私の作品という文字でいっぱいにすることができて嬉しいですっ、ありがとうございますっ！！また、他の作品でもお会いできることを願っておりますっ！ (2021年1月18日 17時) (
レス) id: 3e29fdde61 (このIDを非表示/違反報告)
くるいばな(プロフ) - コメント失礼します。文章の書き方、雰囲気、お話の構成など全てに脱帽しました。これ程までに身を焦がれた小説を今まで読んだことがなかったので胸いっぱいです。まるで夜の空気に晒されているようでそれでいて暖かくなるような作品でした。更新お疲れ様でした。 (2021年1月17日 20時) (レス) id: e07b1cae6b (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - 花丸さん» 最後まで読んでくださり、またコメントまで下さりありがとうございますっ！！可愛いを被った男を見せて欲しさに書いたので伝わっていて嬉しい限りですっ。沢山のお褒めのお言葉本当にありがとうございます。次回作でも花丸様とお会い出来ることを密かに願っておりますっ (2020年12月20日 13時) (レス) id: 3e29fdde61 (このIDを非表示/違反報告)
花丸(プロフ) - 完結おめでとうございます！強引な棘くん最高でした！特にキスシーン以降の描写が最高で、キュンキュンさせられっぱなしでした！いつも砂時計様の言葉選びのセンスに感服しております(;;) 棘くん推しには堪らないお話でした…更新お疲れ様でした！ (2020年12月17日 20時) (レス) id: f266018fa7 (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - koi31さん» こいみーちゃん！！作ったばかりの新作にまで来て下さりありがとうございますっ！！亀更新でまったりと頑張っていきます。何卒、お付き合いの程よろしくお願いしますっ(;_;) (2020年12月7日 22時) (レス) id: 3e29fdde61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：砂時計
| 作成日時：2020年12月7日 1時
