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「…実は、お兄さんに相談に乗ってもらっていたんですが、やっぱり、私上司とお出かけするのやめたんです」


からからに渇いた文字列が静かなBGMのみが広がる店内に零れ落ちる


その吐き捨てられた私の言葉を受け取ったお兄さんは細い目を見開きながら驚きを表現する


彼が身につけているシックなお店の制服が擦れて、音をあげる

言葉にならない声が彼の口から溢れだす


レジが置かれた台を横切り急いで自身の近くに詰め寄ったその姿に少し焦りが見えた気がした




「…な、何かあったのか?」

「え、…や、何も…っ…」


隣に並ぶように詰め寄ってきたお兄さんの姿に吃驚するものの本音を濁すように言葉を紡ぐ


上司よりも背が高いお兄さんを見上げながら問に答える


冷たい風が自身の肌を撫でる

入口のガラス張りのドアに自身の暗めの青い瞳が写り込む


一夜を共に過ごしただけの関係で浮かれていた自分が恥ずかしくてお兄さんに説明する事を戸惑い咄嗟に何も無いと片付けてしまった

ローズハートさんが女の子と歩いているのを目撃して、私との関係はただの遊びだったのだと突きつけられた時、自分はきっとどうかしていたのだろう


時間が経てばそれも冷静に見えてきて吟味して考えて行動できたのかもしれないのにと脳がタラレバを口にする



「そ、うか…」

「はい!相談に乗ってくれてありがとうございました!!」


「本当に…、大丈夫なのか?」


私を心配するかのように不安な色を見せながら問いを口にするお兄さん

何かを確認するかのような、見定めるように私の姿を見下ろす


それに頷きを返しながら笑みを浮かべる



もういいのだ
もう、朱色は忘れよう

一時でも、一夜でも、素敵な夢を見せてもらえたのだと思うようにしよう

そして、そのままこの想いに蓋をして鍵までかけて元の上司と新人の関係に戻ればいいのだ


そしたらこんなに苦しい思いもしなくて済むのだから





「はい…、新しい恋を探そうかな、なんて思ってます」




暗闇へと染まりはじめる空模様

一気に夜の彩りを見せ始める外へと1歩を踏み出しながら二酸化炭素を吐き出す


お兄さんの深い緑に背中を向けて地面を踏み込む


後方で彼の声が聞こえた気がしたが何も聞こえていないフリをする


苺のタルトが入った紙でできた箱を持つ手に力が入る

今度こそ、ぐちゃぐちゃにならないようにと、丁寧にそれを持ち運ぶ



甘くて、ほんのり、苦い

ケーキとは違って恋とはなんて苦いのだろう

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砂時計(プロフ) - 葵さん» 初めまして!コメントくださりありがとうございます!!可愛いですよねっ、描いてくださった友人のイラストを褒めてくださりありがとうございます!リドルさんの素敵なところをお届けできるように頑張って書いたのでそう言って頂けて嬉しいですっ!! (2021年7月23日 12時) (レス) id: 3e29fdde61 (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - チーズ鍋さん» この度はお返事が遅くなってしまいすみませんっ私のお話を読んでくださりありがとうございます。私なりに綺麗な世界観を見せたいと思っていたのでそのようにお褒めいただけて本当に嬉しいですっ!!本当にありがとうございましたっ。 (2021年7月23日 12時) (レス) id: 3e29fdde61 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - うおおおおぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!かわぇぇえええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………うるさいですよね。すみませんでした。ほんとリドル君スキッ! (2021年7月19日 15時) (レス) id: 4534ab9975 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ鍋 - 言葉選びが素晴らしく、本当に綺麗な文章でした。話の内容も面白く、しかも読みやすいので一気読みしてしまいました。この作品と出会えて良かったです。ありがとうございました。 (2020年10月16日 22時) (レス) id: 067328da22 (このIDを非表示/違反報告)
砂時計(プロフ) - バカさん» この作品を最後まで読んでくださり本当にありがとうございます!!初めてに私の作品を選んでいただけて大変嬉しく思います(><)お褒めの言葉本当に感激ですっっ!!他の作品でも貴方様にお会い出来ることを願っております(;_;)!本当にありがとうございます!! (2020年9月23日 1時) (レス) id: 47df7c7bae (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:砂時計 | 作成日時:2020年8月18日 3時

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