今夜もう一度君を抱く【ツイステ】

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｢そうなのか？｣


｢はい。27歳っていう若さで上に立つほどの実力を持ってるんですよ？おまけに超がつくほど厳しいんですっ｣


そんな顔も整ってて実力も権力もある人に可愛い一面があるわけが無い



自身の記憶に残る上司の人物像を付け加えるように目の前のお兄さんに伝える


入口の透明のドアガラスから入り込む明るい日中の日差しが自身の薄い水色へ降り注がれる

ひんやりとした冷房の風が火照った体全体を撫で去る


自身の口から出たローズハートさんについての文字をなぞるように飲み込むお兄さんがからからと渇いた笑い声を吐き捨てた



｢実はその上司をカッコイイと思ってる、とか？｣

｢か、顔が綺麗な、だけですよ…っ｣

｢でも、嫌いじゃないんだろ？｣


厳しい厳しいと言葉を何度も並べる癖に嫌悪感が含まれていない、その理由は嫌ってはいないから


むしろ、好きに近かったりして、な？


お兄さんのお決まりの営業スマイルとは程遠い何かを品定めするかのような笑みに背筋がぞくりと震える

突きつけられた言葉を咀嚼しながらローズハートさんの朱色と抱かれたその身体を思い出す。その途端にドクドクと鼓動が加速を始める



｢ち、違いますよ…っ、同じ魔法医術師として尊敬してるだけです｣

｢その割には意識してるみたいだが？｣

｢そんなことは…っ｣




無いです

そう、付け加えたかったはずの言葉が何故か喉の奥に引っかかり濁った形で飛び散る

目の前に立つお兄さんの言葉に自身の表情が歪みを生む

頭のどこか片隅に彼が存在していることを受け入れたくないと叫ぶ本能


何故ここまでローズハートさんが私との一夜をなかったかのように振る舞うのが気に入らないのか

ケーキ屋のお兄さんの言葉で思考が答えを吐き出した


そんなこと知りたくなかったし、気づいたら後戻りなんて出来ないのに

ただの一夜の体だけの関係が私と彼の名称だったはず


その呼び名を呟いた瞬間、寂しさに近い感情を抱いてしまう



答えなんてわかりきってるんじゃないか

私が上司であるリドル・ローズハートさんを意識しているからだ




店内に広がる甘くて苦い匂いが鼻をかすめる

胸を貫くような痛みを帯びる


目の前に立ち私を見下ろすお兄さんの深い緑色の髪の毛が傾きを見せ、眼鏡の奥の瞳がゆらゆらと揺れる



吐き出された自身の言葉が地面へと落ちていくのをただただ見送ることしか出来なかった

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