拝啓、ヒーローになる君へ【轟焦凍】 (ページ4)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:3,491 hit

▽04 ページ4

「親父を超えるヒーローになるためだ」

そう言葉を吐き捨てたクラスメイト。

名前は、轟焦凍
フレイムヒーローエンデヴァーの息子

成績も優秀で個性も凄いらしい。

周りの子が口々に彼を褒め称えていたのを聞いたことがある。

そんな彼の目に浮かぶ憎悪
自身の赤と白を大きく揺らす彼に目が奪われる。

視界と聴覚を鈍らす雨の中でも自分に映る少年の姿がはっきりと憎しみと悲しみを訴えてるのが伝わった。

彼の中できっと私には計り知れい悲しみや憎しみが渦巻いてるんだと直感的に感じた。

とても寂しいと脳が呟きを漏らす。

私は、時乃A
凝山中学に通う2年生

元プロヒーローだった父が殉職して以来、母と二人暮しをしてるただの凡人。

将来の進路は、公務員になることで、そのためにそこそこ頭が良い高校へと進学することを目標に勉強に勤しむただの中学生。

個性は父親と同じ、時間(タイム)と呼ばれるもの。

人の寿命を分単位で見ることの出来る個性。

体が軟弱な私ではなんの役にも立たせられないただの没個性。

人の命の寿命を見ることができるのに己が弱いために動けない。

父親の命の寿命を見れていたはずなのに幼い私は声を上げることができなかった。

朝の行ってらっしゃいを伝えたときに、いつもならゆったり動く寿命を示す数字が忙しなく動いていたことを言えていたら父は今も元気で居てくれていたのだろうか。

数年たった今でもそんなたらればを考えてしまう。

そんな情けない私がヒーローなんかに憧れを持つ資格なんてあるはずがない。

「私は誰かを助けられるような人間じゃないからなれないんだよ」

傘をさして隣を歩く彼
雨音がざわめきを訴える

私は父のような人を救うヒーローに憧れを抱いていた、ただの凡人で

私はこの個性を使っても誰も救えないと身の程を知っている、ただの中学生である。