アップルパイより甘いもの【孤爪研磨】 (ページ1)

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薄くピンクに染まった
小さな花びらが舞い散る

冷たく白い雪が融け

今日、春になった。

「えー。俺が今日からこの２年３組の担任です」

「まあ。１年間よろしくお願いします」

担任の先生の声が教室内に響き渡った直後

パチパチと効果音をクラス中が立て始めた。

そんな
ドラマみたいなワンシーンを

雲ひとつない空が見える窓際の席から

二つ隣の一番後ろ

まあまあ、気に入っている位置から

ぼんやりと眺めていた。

だけど私には
先生の言葉なんて耳を通り抜けるだけ

思考に映るのは

渇ききった友人と呼んでいる人の顔

もう会うことのない中学の時のチームメイトの横顔

昔から友達を作るのが苦手で

人と会話するのが不得意で

他人と話をすることに抵抗があるせいか

まともに人と付き合ったことがない。

1年生の時だってがんばってはみたものの

「Aどう思う？」
「Aも遊ばない？」

「あ、……えっと。いいよっ」

嫌なことを嫌だと
無理なことを無理だと

ちゃんと伝えることも

まともに会話すらも出来ず

曖昧で中途半端で
上辺だけの関係を続け

偽ることを繰り返してたら

つまらない人

と、レッテルを貼られた。