向日葵の咲くおうち ③【雪】 (ページ32)

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ひーくんといっしょページ32

岩本side

世界は、たった数カ月で大きく変容し、当たり前だったことが当たり前じゃなくなった。

我慢なんて出来ればしたくないけど、大切な人の命を守るためだと言われれば従うしかない。

行政の指導により俺の働くBARも休業中。

なので数年ぶりに夜に寝て朝起きるという規則正しい生活を送っていた。

仕事が無くなるかもという不安はもちろんあるけど、単純に陽葵との時間が増えて嬉しい気持ちもある。

朝と言っても、もう12時前。

小腹がすいた俺は自室からリビングへ向かった。

そこにはスマホに向かってニコニコしている陽葵の姿。

陽葵『きゃはっ、じゅりくんげんき〜？』

……相手はじゅりくんかよ！！

キッチンでAさんが作ってくれたパンを食べながら陽葵を観察しているけど、あれは完全に恋する乙女の表情。

陽葵、まだ5歳だよね！？

ねぇ、最近の子ませすぎじゃない！？

15分ほど話して通話は終わったようで、陽葵はAさんにスマホを返そうとして立ち上がる。

陽葵『あれ？ひーくん、おそよう！』

そこで陽葵はやっと俺の存在に今気づいたようで満面の笑みを見せてくれた。

じゅりくんしか見えてなかったもんね〜！？

べ、別に拗ねてなんかない……。

岩本「おはよ。じゅりくんと電話？」

陽葵『うんっ！』

岩本「ふーん」

陽葵『んぅ？ひーくん、おこってる？』

岩本「怒ってない」

陽葵『むー！やっぱりおこってる！』

そう言って俺の元へ走ってきた陽葵は減速せずに、そのままのスピードで俺の腰辺りに衝突してきた。

岩本「うぉっ！え、なに」

陽葵『ごめんね、ひーくん。ゆるして？』

俺の太ももに抱きついて、上目遣いでお願いしてくる陽葵が可愛くて可愛くて無事死亡。

岩本「うん、いいよ。その代わり、この後ひーくんと一緒に遊んでくれる？」

陽葵『わかった！』

満足そうにうなづいた陽葵は俺から離れて、今度こそAさんにスマホを返しに行った。