SNOW SNOW SNOW 2号店 (ページ37)

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【紫】もっと強くページ37

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ご時世柄、どうせマスクで隠れてしまうからと唇のメイクを透明の薬用リップで済ませたせいで、一応メイクをしているのにも関わらずパッとしない自分の顔が鏡に映っていて、思わず乾いた笑いを浮かべる。

この世界が大きく変わってしまってから、1年と少しが経った。

全世界で約1億5000万人が感染し、300万人以上が亡くなったらしい。

その一人一人に家族や大事な人がいたんだと思うと悲しいなとは思うけど、やっぱりどこか他人事の自分がいる。

そんな薄情な自分が大嫌い。

こんな世界じゃなかったら、私は今も夢を追いかけていたんだろうか。

「あーあ。まぁた、私が世界中の不幸を全部背負ってます！みたいな顔しちゃってる」

『……辰哉』

彼は実家が隣で同級生。

いわゆる幼なじみ。

そして私が去年人生のどん底にいた時に救ってくれた人。

その頃の私は、幼い頃からの夢であった客室乗務員の仕事を失い、結婚を前提に同棲していた彼氏には白昼堂々浮気をされ、精神的にも肉体的にも限界だった。

そんな時、ニュースで私の働いていた会社が日本から撤退したこと知り、心配して連絡してきてくれた辰哉は私の様子がおかしいと感じ、無理やり呼び出したらしい。

久しぶりに会ったというのに、お酒を片手に『こんなに辛いなら消えちゃいたい』と零しためんどくさい私に、彼はなんでもないような顔をして言ったんだ。

「じゃあ、お前の命、俺にちょうだいよ」

『………は？』

「だっていらないんでしょ？じゃあ、俺が貰うわ」

『待って、話の流れが全くつかめないんだけど！？』

「まぁまぁ、いいから黙って俺のもんになれって」

と、なんだかよく分からないまま私は辰哉のものになったらしい。

ってか、辰哉のものってなんだよ！ペットか！

でも、家も仕事も失った私を受け入れてくれる人がいて本当に助かったんだ。