【桃】キミの夢はオレの夢 ページ19
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中学、高校と続けてきた部活。
その集大成となるはずだった高校総体の県大会中止が顧問から知らされたのは数時間前のこと。
その場では同期や後輩たちの目が合ったから平気なフリをしたけれど。
解散後やっぱり悔しくて、涙が止まらなくて、下校時間が迫った今も体育館の裏でひとりひっそりと泣いていた。
どんよりとした雲から降り注ぐ雨が風によってひさしを超え、私を濡らす。
まるで私の気持ちを表しているみたい…なんて感傷に浸っていると、突然目の前が暗くなり雨が止んだ。
顔を上げると、私のよく知った顔が目の前に立ち、傘をさしてくれているようだった。
『大ちゃん』
「もぉ!なんで電話も無視するの?俺、Aのことめちゃくちゃ探したんだよ?」
『……ごめん』
「こんなに濡れちゃってさ!風邪でも引いたらどうするの?とりあえず一緒に帰ろう?立てる?」
『うん……』
「はい。自分のブレザー脱いで、俺の着て?」
『いいよっ!大ちゃんが寒いじゃん!』
「俺はいいの。いいから言うこと聞いて?」
大ちゃんは私のクラスメイトであり彼氏。
いつも元気いっぱいで優しくてクラスの中心にいる彼は私の憧れだった。
そんな彼から告白されて付き合ったのは、もう1年以上前だっけ。
付き合ってからも部活ばかりで何もしてあげられない私に「Aは本当にすごいよ!尊敬する!俺なんて運動神経悪いから絶対にできないもん!Aの夢が叶うことが俺の夢だから、気にしなくていいんだよ!」と言ってくれた。
そんな彼に活躍を誓った最後の大会がこんな終わり方をするなんて悔しくて、申し訳なくて、溢れる涙は止まることを知らない。
いつもは大ちゃんのマシンガントークで、あっという間の駅までの道のりも、今日は2人とも黙ったままですごく長く感じる。
彼は左手で傘をさし、右手で私の手を強く握っている。
小柄な彼だけど、男らしくて大きな手だと、ときめいたのは付き合って始めて手を繋いだ時。
折りたたみなのにすごく大きさ傘を持っている理由が、私と相合傘をするためだと知ったのは半年前。
大ちゃんとの思い出は全て私の胸に刻まれているのだ。
こうやって珍しく黙ったまま歩いているのは私になんて言葉をかればいいのか、一生懸命考えているから…だよね?
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作者名:Sakuya | 作成日時:2020年12月3日 12時