SNOW SNOW SNOW 【短編集】 (ページ30)

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【橙】頑張り屋さんにはご褒美をページ30

🧡

し！ん！ど！い！

年末で、やってもやっても何故か逆に溜まっていく仕事にため息しか出ない。

仕方なく家に持ち帰ってサービス残業。

なにが労働環境の改善よ！

そんなこんなで忙しいと言い訳をして、大学時代から5年ほど付き合っている彼氏の康ちゃんに構ってあげられていないことは認める。

毎日何通も彼から届くLINEを無視したり、かかってきた電話もすぐ切り上げることに加え、もうかれこれ3週間ほど会っていない。

康ちゃん最優先だった付き合い始めの頃の私が知ったら卒倒するだろう。

今日はクリスマスイブ。

帰りの電車の中は色めき立ったカップルや、楽しそうな家族連れで平日の夜とは思えないほど騒がしい。

そんな中、スマホの画面に移る私の顔は酷いもんだ。

まともに寝てないからそりゃそうか……。

なんて自分で勝手に納得していると、ちょうど康ちゃんからLINEの通知。

「A、今どこ？」

『今、仕事終わって電車乗って帰ってるよ』

「そっか。……怒らんといてな？」

『え、急にどうしたの？』

「クリスマスは会えへんって言われてたのに、どうしても我慢できひんくて、Aの家来てもうた。」

『えっ、今！？』

「うん…部屋に入っててもええ？」

『いいに決まってるじゃん！寒いでしょ！？なんのために渡してある合鍵なのよ！』

「ありがとう。待っとるな。夜道には気をつけて」

『うん！』

仕事が何時に終わるかわからなくて、今年のクリスマスは会わないことになってたけど、まさか康ちゃんが家まで会いに来てくれるとは思っていなかった。

嬉しくて、最寄り駅から家までの足取りが軽い。

『康ちゃん、ただいま！』

家のドアを開けると奥から康ちゃんが走ってきて抱きついてきた。

その姿は、まるで大型犬だ。

「おかえり！A会いたかったで！」

『ふふ、私もだよ。』

「………あんなぁ、A」

『ん？どうしたの？』

「……やっぱなんでもない。はよ、こっち来てみ？」

康ちゃんに手を引かれてワンルームの部屋に入ると机の上にはチキンやケーキが並べられている。

『えっ、康ちゃんこれどうしたの？』

「ん？クリスマスパーティやで。……嫌やった？」

『そんなわけないじゃん！すぐ着替えてくるね！』

康ちゃんが準備してくれた食事を楽しんだ私たちはソファーに腰掛ける。