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26話 ページ26

「・・・げて・・・」

 パレードが始まって、しばらくたった頃・・・ぼんやりとパレードを見つめていた私の頭に、声が響いた。たとえ記憶がなくとも、これが誰の声かなんてすぐにわかる。・・・だって、この声は私が誰よりも多く聞いてきた、私自身の声なんだから・・・

「・・・ねえ、お・・・・・・い、に・・・て・・・」

 パレードや人々の歓声の音によりかき消され、頭の中に響く自分の声が何を言っているのかが理解できない。

 ・・・でも、どうして自分の声が・・・と考えて、何かで読んだある話を思い出した。・・・記憶を失うと言うことは記憶を失う前の自分と記憶を失ったあとの自分の二人の人格が生まれる。すなわち、二重人格になることと同義である、という話を・・・

 この話が真実であれば、今私の頭に響く声は記憶を失う前の私が発しているもの、ということだろう。

「今すぐそこから逃げて!!私の・・・貴方の心が壊れる前に!!」

 急に鮮明に聞こえてきた声に目を見張る。・・・逃げるって・・・それに心が壊れるっていったいどういう・・・

歩美「Aお姉さん!!逃げて!!」

元太「拳銃が狙ってるぞ!!」

 そのとき、人混みから子ども達が焦った様子で飛び出してきた。告げられた言葉の意味を理解しようと思考をめぐらせているうちに、「危ない!!」という声と共に、私を庇うように阿笠さんが立ちはだかった。

哀「博士!!」

 パシュッという小さな破裂音がすると、左肩を押さえて膝をつく阿笠さん。右手の隙間から、じわじわと赤い色が広がっていく様子が、私に底知れないほどの恐怖を与える。

「私が爆弾に気づいていれば、こんなことにはならなかったじゃない!!」

 再び頭に響く、私の声・・・でもこの声は先ほどまでの私に何か訴えていた声ではなくて・・・記憶だ・・・阿笠さんが撃たれた今の状況が、私の忘れていた記憶の何かを掘り起こしたのだろう。

 ・・・ここにいちゃいけない・・・私が一緒にいたら、肩を打たれた阿笠さんのように、線路に飛び降りて私を助けようとしたコナン君のように危険な目に遭わせてしまう・・・そして、きっと私の所為で・・・




また大切な人がいなくなる





蘭「A!!A!!」

 私を探す蘭さんの声を背に受けながら、私は一刻も早くその場を離れるべく、足を動かした。

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フランドール - ゆうみんさん» コメントありがとうございます。そうなんですよ!いいところで話が続かない、私、いつもそうなんです。学校が忙しくて更新遅いですが、楽しんでいただけるよう頑張ります。 (2019年7月16日 19時) (レス) id: e0624ff3f8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみん - そうだよね,いつもいいところで話が続かない、彼女ちゃんの気持ちわかる、次回楽しみです (2019年7月14日 18時) (レス) id: 031a0bf45d (このIDを非表示/違反報告)
フランドール - 美紀さん» コメントありがとうございます。私もコナンや新一、それから他のキャラも大好きです。 (2019年7月11日 19時) (レス) id: e0624ff3f8 (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - コナン大好きです最高ですコナンと新一大好きです (2019年7月8日 14時) (レス) id: a31ea93868 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:フランドール | 作成日時:2019年7月6日 20時

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