第11話 ページ11
影山side
高校に行く途中でAに会えて
内心本当に嬉しかった。
家も割と近く、
男女問わずここまで話したのは
Aくらいだ。
けどバレー部に入らない、と知ったとき
驚いたし、嫌い、と言ったときは
怒りを覚えた。
.
中学最後の試合、俺のトスが誰にも
打たれなくて拒絶されて。
その時の悔しさは例えられない。
その試合の日、Aは観に来ていたらしく
体育館から出て、軽いミーティングと
着替えが終わり会場からでたとき。
「お疲れ様」
挨拶がわりにそう、Aが言ってきた。
その後は各自帰るだけだったというのもあり
Aと話すことになった。
.
.
近場の公園、今となってはガキはゲームに
夢中らしく遊んでいる子供は居なかった。
ベンチに腰掛け並ぶ。
何を言えばいいかわからず黙っていた。
突然頭に手が置かれた。
ポンポンと撫でられる。
その手が優しく、あまりにも
おだやかで、俺の中の何かがプツンと切れた。
頬を伝わる雫。
あまりにも長く落ちるのには
自分でも驚いた。
「悔しかったね」
あぁ、悔しかった。
「辛かったね」
あぁ、捨てられたトス、本当に辛かった。
「大丈夫、飛雄は才能とかセンスだけじゃ
ないって知ってる
走り込みだって知ってる
帰り道１人でずっとボール触って
練習してたのも知ってる
努力家だね、飛雄は」
『才能』『センス』
そんな薄っぺらい言葉で片付けられてきた
バレーの実力。
でもAは見ていてくれた。
見てほしくてやっていたわけでもなく
自分の為にやっていたんだと思い､
才能だのセンスだの言われても黙っていた。
心の何処かでそんな言葉で
片づけてほしくないと、そう思っていたのかも
しれない。
この事以来、
説明が下手な俺の話を聞いてくれたり
よくは知らないが俺の陰口を
止めていてくれたらしい。
王様、ってのがおさまってきたのは
Aのおかげ。
本当に感謝している。
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