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「どうだ、思い出せそうか？」
龍斗はテレビの中で自分によく似た人がマイクを片手に歌っているところを眺めながら、ゆっくり首を横に振る。
閉じ込められていたかと思えば今日は突然事務所まで連れ出され、自分のプロデューサーの東雲と名乗る男に横柄に振る舞われている。
「やっぱりダメなのか。不思議なもんだな。宮澤のことも忘れたのか」
「みやざわ…？」
「お前、あんなに世話になったってのに。天国で泣くぞ」
「亡くなってる、んですか。その人」
「あぁ、少し前に。おかしい事件だったな。こういう業界だから、自 ./殺ってことになったけど…にしては指紋もない、凶器も果物ナイフって。誰かが突発的にやったとしか思えねえな」
龍斗が黙って聞いていると、東雲が机にドン、と手をついた。
「そこに来て龍斗、お前の記憶喪失だよ。なぁ、本当はあいつが憎かったのか？ずっと前から、殺したかったのか？」
「覚えて、ません…何も…」
東雲はため息をついて煙草を付けた。
「まあ、俺もお前がそんなことをするとは思えない。
記憶がなくなる前の龍斗は、有名になるためなら何でもする、って俺によく言ってたよ」
「僕が、そんなことを」
「ああ。無理しすぎたのかもしれないな。とりあえず3月までは待つよ。でも3月までに何も思い出さなければ、契約更新は難しい」
「けいやく？」
「…これからも事務所所属のアイドルでいるかどうか、決めるってことだ。今の時点ではとりあえず、どうなんだ。アイドル、やりたいと思うか？」
龍斗は目の前にいくつも広げられた雑誌を眺めた。
多くは笑顔や澄まし顔で、時に挑発するようにこちらを見つめる自分も、モニターに映る歌い踊る自分も、とても今ここで訳もわからず座っている自分とは同一人物だと思えない。
何度も何度も、医師やスタッフを名乗る人たちから聞かれた。
芸能活動がストレスだったのではないか？と。
けれど答えることはできない、何も覚えていないから。
ただひとつだけ＿1人だけ。
作ちゃん、とそう愛しげに自分を呼ぶ、彼だけが持つ不思議なほどの暖かさだけに今は惹かれる。
「…続けたいとは、思いません」
彼は受け容れてくれる気がするのだ。
何も思い出せない、アイドルではなくなった自分も。
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LIKKA(プロフ) - →いつも励まされております。これからも未熟ですが楽しんでいただけたら感無量です。 (2020年5月28日 0時) (
レス) id: 39c1d8fd7b (このIDを非表示/違反報告)
LIKKA(プロフ) - 呑さん» いつもありがとうございます！また勿体なきお言葉を…岸くん確かに何気に初ですね、今回メンカラ紫祭りです。アイムドール、本当にすみませんでした。続き書こうと思っていたのですが事情があってちょっと変化させました。それでも楽しんでくださって→ (2020年5月28日 0時) (レス) id: 39c1d8fd7b (このIDを非表示/違反報告)
呑(プロフ) - LIKKAさんのお話は全部苦しいくらいに好きで好きで仕方ないのですが、このお話本当に大好きです。個人的にLIKKAさんの初岸くんに歓喜しております。アイムドールもドキドキしながら読んでいたので、そのドキドキを拾って頂いた気がしてます。大好きです！！！ (2020年5月27日 23時) (レス) id: 2d1b1a1819 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：LIKKA | 作成日時：2020年5月23日 1時
