039 ページ39
.
龍斗のマンションを出て、地下鉄の車中で大光は手帳をまた開いた。
「2015年9月1日 雨
始業式のと中で、ママがあぶないと病院に呼ばれた。ついたときは、ママはあんまりいたそうじゃなかった。でも、ぼくを見て、あの子だれ？と言った。
お医者さんが強い薬を打ったから今は記おくがこん乱してると言っていた。
でもママは他のことは覚えている。きれいにぼくのことだけ忘れたみたい。でもぼくは人形だから、龍だよ、ママ忘れちゃったの？と笑って言えた。
そのあと、1人になってからたくさん泣いた」
「2015年10月13日 晴
昨日の夜中、ママがなくなった。
ママは最後まで、僕のことを思い出さなかった。今大事なシーンをとってるので、まだ泣いてない。
おばあちゃんの家から東京へ通うのは無理なので、おばあちゃんが東雲さんに事む所をやめる話をした。
東雲さんに、龍斗はどうしたいの？と聞かれた。
子役もアイドルも、僕のゆめじゃなくてママのゆめだけど、やめたら、ファンの人も、しょう君も、海人君も、ゆうと君も、僕のことをすぐに忘れるだろう。岸くんと大光も、ひっこしたら僕のことを忘れちゃうだろう。
ママは、僕のことを世界一大切な宝物って言ってたのに、僕のことを忘れたから。
みんなはもっと、僕のことはかんたんに忘れるんだろう。忘れられると辛い。
僕は、もうだれにも忘れられたくない。
テレビとか映画にたくさん出て、みんなにずっと覚えていてもらうことにした」
その日を最後に日記は終わっていた。
龍斗が母親の葬儀のときしきりに繰り返していた、「僕を忘れないで」という言葉の答えに今、たどり着いた。
まだ幼かった龍斗に母に忘れられたことのショックは大きすぎたのだ。誰かに忘れられることを異常なまでに恐れ、だからさほど好きではなかった芸能活動を続けていたのだ。
自分が全てを忘れた今、龍斗はもしかしたら苦しみから解放されているのだろうか。
でも、もし記憶が戻ったら、そこには代わりのメンバーがいる。大光はそんなのだめ、と首を振った。
大光にできることはただ一つ、龍斗の望みを守り続けることだけだ。
電車を降りて改札を駆け抜け、自宅の玄関に飛び込んだ。
「母ちゃん、俺の全身写真、撮って！！」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 150人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
LIKKA(プロフ) - →いつも励まされております。これからも未熟ですが楽しんでいただけたら感無量です。 (2020年5月28日 0時) (
レス) id: 39c1d8fd7b (このIDを非表示/違反報告)
LIKKA(プロフ) - 呑さん» いつもありがとうございます！また勿体なきお言葉を…岸くん確かに何気に初ですね、今回メンカラ紫祭りです。アイムドール、本当にすみませんでした。続き書こうと思っていたのですが事情があってちょっと変化させました。それでも楽しんでくださって→ (2020年5月28日 0時) (レス) id: 39c1d8fd7b (このIDを非表示/違反報告)
呑(プロフ) - LIKKAさんのお話は全部苦しいくらいに好きで好きで仕方ないのですが、このお話本当に大好きです。個人的にLIKKAさんの初岸くんに歓喜しております。アイムドールもドキドキしながら読んでいたので、そのドキドキを拾って頂いた気がしてます。大好きです！！！ (2020年5月27日 23時) (レス) id: 2d1b1a1819 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：LIKKA | 作成日時：2020年5月23日 1時
