038 ページ38
.
「2015年7月23日 雨
けんさの結果、ママはがんでしばらく入院することになった。お医者さんは手術をすれば治るよと言ってた。けど、おばあちゃんには「もう長くない」と言っていたのが聞こえた」
「2015年8月4日 はれ
とくてん会から帰ってきたら、ママはいたみ止めを打ってもらってねていた。
おばあちゃんが、こんな時に仕事に行くなんて、それでもママの息子なのかと言った。
ママが行きなさいって言ったから、と答えたら、それでも行くもんじゃないと言われた。ママの息子だからママの言うことを聞いたのに、なんでおこられたんだろう」
「2015年8月10日 はれ
ママはお仕事をがんばりなさいって言うし、おばあちゃんはお仕事なんてやめなさいって言うし、病院に行くとつかれる。
そのことを東雲さんに言ったら、いい事を教えてくれた。
人形になればいいらしい。
アイドルはぐう像、つまり人形みたいな意味だから、つかれる、とかいやだ、とか思う前に、人形みたいに心をなくして、笑っていればいいらしい。
何を言えばいいかは、ダンスや歌みたいに大人が全部教えてくれるから、考えなくてもいいらしい。
すごいと思った。人形でいれば、楽になれる」
ダメ、と過去の彼に向かって叫びそうになって、浴室から龍斗が出てくる音で我に帰る。
大光はさっと手帳を自分のリュックにしまうと、髪を濡らしたままの龍斗に思わず抱きついた。
「…どうしたの？」
「作ちゃん。ごめんね、俺なんも知らなかった」
「…僕も、何も知らないよ」
龍斗はそのままソファにまた倒れ込んだ。
大光は涙を堪えながら見つめた。
まるで本当の人形のように綺麗で、そして本当の人形のようにその中身をなくしてしまった彼を。
一体どれだけの重圧をたった1人で背負ってきたのか、その重みを計りあぐねていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 150人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
LIKKA(プロフ) - →いつも励まされております。これからも未熟ですが楽しんでいただけたら感無量です。 (2020年5月28日 0時) (
レス) id: 39c1d8fd7b (このIDを非表示/違反報告)
LIKKA(プロフ) - 呑さん» いつもありがとうございます！また勿体なきお言葉を…岸くん確かに何気に初ですね、今回メンカラ紫祭りです。アイムドール、本当にすみませんでした。続き書こうと思っていたのですが事情があってちょっと変化させました。それでも楽しんでくださって→ (2020年5月28日 0時) (レス) id: 39c1d8fd7b (このIDを非表示/違反報告)
呑(プロフ) - LIKKAさんのお話は全部苦しいくらいに好きで好きで仕方ないのですが、このお話本当に大好きです。個人的にLIKKAさんの初岸くんに歓喜しております。アイムドールもドキドキしながら読んでいたので、そのドキドキを拾って頂いた気がしてます。大好きです！！！ (2020年5月27日 23時) (レス) id: 2d1b1a1819 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：LIKKA | 作成日時：2020年5月23日 1時
