＊＊＊ ページ4
｢人間、このマグカップがええわ｣
ペアのマグカップを指差し、いつまでも私のことを人間人間と呼んでくる悪魔にそろそろ腹が立って来る。
上から目線なのに加えて更に名前で呼ばないとは何だ。
こんな生意気なクソガキの塊のような悪魔と過ごしてやろうと腹に決めたのに。
｢あのさぁ、いい加減その人間って呼び方ムカつく。私だって名前あるし、アンタだって名前あるでしょ｣
｢はぁ...センラです。アンタは？｣
｢A。ＯＫ。センラね｣
｢呼び捨てってなんか癪やなぁ｣
｢一々うるさいわこの馬鹿悪魔｣
｢はいはい。A様の言う通りにしますよ｣
腹立たしいのと、どこまでも素気ないのと、無関心なのと。
本当に何だ、この悪魔。
｢なぁんでアンタそんなに私に無関心な訳？｣
｢はぁ？無関心とか趣味やないんですけど？せめて素気ないってことにしといてや｣
｢あっそう！じゃあ素気ないセンラ！何でマグカップ二つもいるの！｣
一々煽って来るし、常に余裕綽々なその態度が兎に角気に入らない。ムカつく。
だが、そんなのは今はどうでも良いのだ。
問題は何故ペアのマグカップなのかと言うこと。
今日はセンラの食器や家具の買い物をしに来たと言うのに。
わざわざペアのものを買う必要なんて無いだろう。
｢別にええやん。俺がAに仕方なく着いて来てやってんて｣
｢はぁ！？アンタがここに来るとか言うんだから私が着いて来たんだけど！？｣
｢ええからそれ買って｣
｢はいはい、おこちゃまセンラに買ってあげましょうねぇ｣
正に売り言葉に買い言葉。
きっと、端から見たらカップルに見えるのだろうが、そんなの知ったこっちゃあない。
私はクソガキのわがままに付き合ってやっている身なのだ。だから、彼の言うことに従順に従っているなんて、そんなこと在り得ない。
マグカップは淡い黄色に、黒い狐が対になるように描かれている大人っぽいものだった。
言動とは裏腹に狐でも好きなのだろうか。
レジで直ぐに支払いを終えて、今日二つ目の紙袋を手にぶら提げる。
女子が荷物を持っているからこれぐらい持ってくれてもいいだろうが、そんな気が利かないのはこの悪魔が子供の心しか持ち合わせていないからだろう。
｢A。ちょっとこっち来て｣
｢アンタがこっち来ればいいじゃん...｣
首を軽く後ろに居る私の方向に向けて前を歩く彼に溜息を吐きながらも、私は彼の横に歩いて行く。
｢荷物。持つから感謝してくださいね｣
思いもしない、彼の行動に少し格好いいと思ってしまった自分が馬鹿馬鹿しい。
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←＊＊＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 111人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ - 更新が止まってます！戻ってきてください！続き楽しみに待ってます！(´;ω;｀) (2020年1月13日 22時) (
レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
mao - こんにちは！！ めっっちゃ面白いですね！バカップルみたいですな〜可愛いです。 初コメ参上！！ (2019年7月29日 6時) (レス) id: d5a3ae9925 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
