23 ページ23
｢…A。｣
ゆっくりと呼ばれた名前。
それでも前は向けなかった。
｢Aってば。お願い。こっち向いて？｣
そろりと伺うように顔を向ければ、へにゃりと笑う。
手招きをされ、そっとベクの隣に座った。
不思議と以前までの一人分の空間は空いていない。
少し振り返れば肩がぶつかってしまいそうな距離。
｢俺さ、Aの事大切にしたい。だから、襲う気なんてないよ？安心して。
Aはリラックスして、隣で寝てくれるだけでいい。だから、今日だけ。お願い。｣
俯いたベクの顔が見えない。
部屋が薄暗くてよかった。
だって、私…泣きそうになってる。
『ベクってほんとにナムジャなの？』
｢なにそれー！バカにしてる？｣
私の顔をのぞき込んでひひっと四角い口で笑うベク。
その顔が可愛くて仕方がない。
ほかの男性と違って、私の体を求めないこの人が、私の過去の鎖を断ち切ってくれるんじゃないか。
そう、思えた。
2人でベッドに潜り込み、お互い背を向けて話し出す。
『ベク、ベクは…どうして聞かないの？私の過去のこと。』
｢あぁ。…。｣
しばらくの沈黙が流れる。
…どうして聞かないのか。
それがずっと気になってた。
もう聞いたっていいはずなのに、ぜんぜん聞いてこないベク。
だから、私たちはお互いの事をよく知らない。
"人の事を聞くならまず自分から"
言いたくはないけれど、ベクのことを知りたかった。
｢んー…Aは、公園で泣いてただろ？だから俺、助けてあげたくて。その一心で"ペット"なんて言い出しちゃったけど…。
でも俺は、さ。言いたくないことってAにもあると思うんだ。だから、Aが言ってもいいなって思えるようになったら話して欲しい。
その時になったら、Aのこと全部、ぜーんぶ教えて欲しい。｣
背中越しに伝わる熱。
優しいべクの言葉に、じんわりと胸が熱くなる。
『うん。わかった。』
でも、そしたら。
『そしたら、その時はベクの事も教えて？』
若干ふるえる声。
後ろでガサっと布が擦れる音がする。
不意に腰に回された腕。
｢分かった。そのときは教えてあげる。Aが忘れてる、俺のこと。｣
『…え。』
心臓に血液が回り出す。
…私が、忘れてる？
どういう事？と聞き返す前に、後ろから気持ちよさそうな寝息が聞こえてきて、言うのをやめた…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 799人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「EXO」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
風鈴(プロフ) - マナベクさん» わー！暖かいお言葉と、閲覧ありがとうございます(；＿；)！ゆっくり更新ですがコツコツ頑張ります！また閲覧してあげてください！ (2015年11月27日 23時) (
レス) id: 87d4e8f005 (このIDを非表示/違反報告)
風鈴(プロフ) - tamamiさん» 私もびっくりです！まさか自分が推してた人と誕生日一緒とは思ってなかったので！w暖かいお言葉ありがとうございます！これからもコツコツ書いていきます！ (2015年11月27日 23時) (レス) id: 87d4e8f005 (このIDを非表示/違反報告)
マナベク(プロフ) - お誕生日おめでとうごさいます！ いつも読んでます！これからも頑張って下さい！続き楽しみです！ (2015年11月27日 23時) (レス) id: 5a3516a22d (このIDを非表示/違反報告)
tamami(プロフ) - 更新いつも楽しみに待ってます！チャニョルと同じセンイルなんて羨ましいです★お誕生日おめでとうございます(^-^) (2015年11月27日 23時) (レス) id: f6d2d12199 (このIDを非表示/違反報告)
風鈴(プロフ) - ひろなさん» コメント、応援、閲覧ありがとうございます;;;とても励みになりますー！これからもコツコツ書いていくつもりなのでまた閲覧していただけたら幸いです！！ (2015年11月25日 23時) (レス) id: 87d4e8f005 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜 風鈴 | 作成日時：2015年11月3日 21時
