届かない虹

45(atae) ページ47

○atae said


與『…っ』



練習室から聞こえてくるさくらの泣き声に心が痛む。


他のメンバーも苦しそうな顔で練習室の中を見つめている。



さくらが練習すると行って部屋を出てからすぐにだっちゃんが追いかけた。




ー そろそろやばいかも。



そう言っただっちゃんの言葉が妙に気になって、様子を見に行こうと立ち上がれば気になっていたのは他のメンバーも同じだったみたいで。



浦「みんなで練習しよっか！」



そう言ったリーダーと一緒に練習室に来てみれば、



泣きじゃくるさくらとそれを抱きしめるだっちゃん。




なぁ、年1番近いの俺やん。

もっと頼ってくれてもええのに。



最初にその光景を見たとき、何故か苛立ちを覚えた俺は慌てて目を閉じる。



さくらの声は悲痛で、苦しそうで、



宇「私たちのことばっかり…」



隣を見れば泣きそうな顔をした宇野ちゃん。



宇「自分のことだって嫌なこと沢山言われてたのに…なんでAAAのことばっか…」



何も言わないリーダー、にっしーも悔しそうな顔で中を眺めてて。



秀「俺が気持ち悪いって言ったから、トラウマなってんだろうな…」



秀太は申し訳なさそうに顔をしかめる。




初めて顔を合わせた時、緊張からか涙を目にためて挨拶をしていたさくら。



それから今まで、こんな風にぐちゃぐちゃになって泣くさくらを俺は1度だって見たことはなかった。




秀太に何を言われてもまっすぐ頑張るからお願いします、と頭を下げるさくらの姿に、なんとなく強い子なんやと思ってた。



正式発表の日、思っていた以上の反響、SNSに上がる批判の意見。



心配して事務所にくればいつものように笑うさくらがいて、正直ほっとしたんや。




いつも以上にはしゃぐさくらを不審に思わなかったわけやないけど、それでもにこにこと笑って俺たちにじゃれつくさくらを見て、



あぁ、やっぱりさくらは強いなって。





そんなわけないよな。






ついこないだまで一般人で、飛び込んだ芸能界。


メンバーにもなかなか認めてもらえなくて毎日必死で俺たちについてきたはず。



やっとメンバーと仲良くなって、笑えるようになったと思ったら周りの人はみんな敵かと思うような集中攻撃。



鳴り止まない通知を、さくらはどんな気持ちで受け取ってたんやろ。



今度の新曲、どれだけのプレッシャーの中で練習してた？



なあ、



気づいてやれんでごめんな。

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