届かない虹

43(hidaka) ページ45

○hidaka said



さくらちゃんの加入が正式に世間に公表された日から、さくらちゃんの様子がおかしいことは薄々気づいてた。


いつも以上にはしゃいで喋りまくって、にこにこと俺たちに愛想を振りまくさくらちゃん。


スタッフは思ったより元気で良かった、なんて言ってたけど俺にはそれが余計痛々しく見えた。



SNSに溢れる非難の言葉。



さくらちゃんのツイッターにはもちろん俺やほかのメンバーのSNSにも批判や心無いコメントは殺到してる。



だけど誰もその話をしないのはさくらちゃんが何も言わないからだ。



もしかしたら本当に気にしてないのかもしれない。



そんな風にも考えたけど



いつも以上に雑誌撮影で自分の見た目を気にしたり、歌やダンスを何度も何度も確認したり。



怖いくらい自分にシビアになったさくらちゃんを見て、これはやばいんじゃないかと思った。



さくらちゃんが何か言ってくるまで待とう。



リーダーとそう話したけれど、このままじゃきっとこの子は俺たちに何も言わない。





SNS上で浴びせられる多くの言葉の怖さを、1番実感してるのは俺だと思う。




ソロでの活動が活発になったころ、俺に向けられる視線や意見は決して好意的なものばかりではなかった。



ラップに対する姿勢は「所詮アイドルのくせに」で見てももらえなかったし、AAAの活動は「所詮ソロ活動がしたいくせに」で片付けられた。




ソロ活動用に開設したSNSではAAAのメンバーを裏切るな、足を引っ張るな、中途半端なことはするな、といった多くのコメントが寄せられた。




気にしてないふりをしながら、顔も見たことない誰かの言葉に一喜一憂する毎日。







こころが、壊れるかと思った。









そんな時に俺を支えてくれたのは間違いなくメンバーだ。




「日高がAAAもソロも同じ熱量で頑張っていることは俺たちメンバーがよく分かってる。それで十分でしょ？」




そうやって笑ったのがメンバーの誰だったかはっきり覚えてはいないけど、全員が同じようなことを言って俺の肩を叩いてくれた。




誰に何を言われてもAAAもソロも辞めないのはメンバーがいるからだ。



1人じゃないことに、俺はどれだけ助けられたか分からない。



だから、さくらちゃんにも頼って欲しい。



グループで頑張るっていうのはそういうことなんだから。



日『…何がそんなに不安なの？』



腕を掴んだまま優しく聞けば、さくらちゃんの目が不安げに揺れる。

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