届かない虹

35(shuta) ページ36

○shuta said


西島が出て行ったドアを見つめてため息をつく。



…あいつ。



あ「あ…あの、」



末『…とりあえずもう一回合わせる？』



俺の言葉にあいつがびっくりしたような顔をして頷く。



ー 千晃に失礼。



西島の言葉で気づく。



そうだ、そんなことしたらそれこそ、千晃の変わりは誰でも良いことになってしまう。




ー なんで解散しようって言わなかったの？




直也君の言葉を思い出す。



そんなこと、一瞬だって考えなかったのは俺がAAAというグループを大切に思っているからだ。



千晃が卒業したって、それでもAAAを応援してくれるファンのみんな。



そんなファンを裏切らないために、新しいAAAを作ろうって、そう決めたんだ俺は。




末『最初に合わせた時の歌い方でもう一回歌える？』


あ「え？でも…」


末『俺が少し歌い方変えてみるから、そのかわりさくらは少しビブラート抑えてみて。』



はじめて呼んだ名前。


はじめて、ちゃんと向き合った瞬間。



あ「……はいっ！」



嬉しそうに笑う笑顔に少し胸が痛む。



本当は、分かってた。



俺が千晃に拘りすぎてるんだって。



夜の練習室で残ってダンスの練習をする姿。


やらせてください、と俺に頭を下げるさくら。



ー ちあちゃんみたいに歌うから、



本当は、俺が間違ってるってちゃんと気づいてた。


それなのにいつしか引っ込みがつかなくなって。


俺までさくらを認めたら、千晃がいた頃のAAAを捨てることになるような気がして。



そんな俺の気持ちを分かってて、どんな態度をとっても怒らず根気強く話してくれたメンバー。


諭すように、時間をかけて待ってくれる。



…ほんと、あいつらには敵わない。



ちゃんと向き合おう。



さくらと、新しいAAAを作るんだー…

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