私にだけ意地悪な理由 2《桃

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…佐久間の声がする。
…何だろう、騒がしいな。

重い瞼をゆっくり開けば、朝から点けっぱなしだった電気が眩しくて思わず顔を手で覆った。いつの間にか窓の外は真っ暗になっていて、朝から夕方までずっと寝ていたんだと気付いた。
そして何度も鳴るインターフォンと扉をどんどんと叩く音。その合間には少し控えめに私の名前を呼ぶ佐久間の声がやっぱり聴こえた。

慌てて身体を起こすと頭にズーンと鈍痛が走る。
朝から布団に包まっていたのに全然汗をかいておらず、悪寒が走った。まだまだ上がりそうな熱にゾッとする。

なんとかベッドから降り、「はーい」と声を振り絞る。
玄関のドアを開くと眉間に皺を寄せた佐久間が私を睨んだ。


「やっほー…」
「やっほーじゃねぇよ！なにずっと寝てたの？」
「寝てた、ごめん…」


佐久間の大きな声が頭に響く。ちょっとボリューム落として、と言いたいところだけれど心配して来てくれたんだろうからグッと飲み込んだ。

「とりあえず、上がるよ」と大きなビニール袋を持った佐久間はずんずん玄関と廊下を進んでいく。私もその後を追ってリビングのソファーにずしんと腰を落とした。

佐久間は買って来てくれたゼリーやスポーツドリンク、果物などをせっせと冷蔵庫の中に入れてくれている。そして何故かその背中が怒っているように感じた。
テーブルの上に置かれているスマホを今朝ぶりに確認してみると、佐久間からのメッセージや着信が数件。
あ、だから怒ってるんだ…きっと、すごく心配させてしまっていたんだろう。

ごめんねって近くに行って謝りたいのに、身体が怠すぎて立ち上がることすら出来ない。座っているのも辛くなってきて、そのまま倒れるようにソファーに横になった。
目を閉じると、あんなに寝たはずなのにまた意識を飛ばしそうになる。
だいぶ風邪拗らせちゃったなぁ…と思っているとおでこにひんやりとしたものが当たった。薄目を開けるとそれは佐久間の手のひらで。


「あっちぃ。水分とれてる？」
「……朝、お茶一杯だけ」
「汗かかないと熱下がんないから水分とろ？ちょっとだけ起きれる？」


佐久間の腕に支えられながら身体を起こしてソファー座り直す。スポーツドリンクを注いでくれたコップを手渡され、それを一気に喉に流し込んだ。

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