私にだけ意地悪な理由 2《桃

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パジャマと明日着る洋服と化粧品と……それらをまとめたバッグと普段使っているバッグの二個持ちで出社すると、そんな私の姿を見た佐久間が意地悪く笑った。


「すんげぇ荷物。どしたの？」


どうしたのって分かっている癖にそういうことを聞いてくるのは、もはや佐久間の趣味なのだろうか。そんな趣味の悪い男をじりっと睨みつけると、てへっと戯けて笑ってみせるから悔しいけれどかわいいなと思ってしまう。


「今日19時ね。店予約してるから」
「予約？」
「そ、寿司ねぇ」
「え！うそ！お寿司？！」


佐久間とご飯に行けるだけでも嬉しいのに、ずっと連れて行ってほしいと言っていたお寿司。そしてわざわざ予約までしてくれていたということに胸が高鳴る。
「ありがとう！」と伝えると「Aが奢れ奢れってしつこいからねぇ」なんて嫌味たっぷりに言う佐久間もどこか上機嫌な様子だった。




.




「お疲れさまです！」
「ん、お疲れー」


会議室で顔を合わせたのは岩本さん。面と向かって打ち合わせをするのは久しぶりだったりする。佐久間と鉢合わせをしたあの日以来だから、ちょっぴり気まずさもあった。


「岩本さん、この間はすみませんでした…」
「大丈夫大丈夫。佐久間くん怒ってた？(笑)」
「あー……いえ、大丈夫でした」
「はは、そっか良かった」


昨日佐久間に手伝ってもらいながら練った新企画を説明していく。相変わらず、良いものは良い、いまいちなものはいまいちだとはっきり伝えてくれるから、岩本さんとは非常にやりやすい。先方に出す案を一つに絞ることもでき、あとは出張までに私が資料をまとめ、岩本さんが売り出し方を検討するのみだ。
今までに営業部の方とタッグを組んで仕事をしたことは幾度とあるけれど、こんなにも息がぴったりで話がとんとん進むのは岩本さんが初めてだった。


「ありがとうこざいました。来週またよろしくお願いします」
「うん、こちらこそありがとう」


時計を見るとちょうど定時を過ぎた頃だった。岩本さんと別れ、慌てて自分の席に戻った。

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