WILD DOCTORS 16

小さな傷 ページ34

「愁だけ先生呼びになってもねぇ…。」

「月ちゃんと将吉先生に悪影響が出ないといいけど…。」

「だからみおも話せないんだよね〜。
啓司先生はどぉだった？」

「お手柄じゃーんってわかってない春を抱っこして喜んでたから、無闇に美咲の部屋に近づかないように言っておいたよ。」

✲✲✲✲✲

「なぁ、俺だけ呼び捨てなの気にしてる？」

「心配してる。
なんでだろうって。
相手が何考えてるのか解らないから余計に怖いよね。」

「ん〜、あ？」

膝枕を外されて立ち上がった月を見たら洗濯の乾燥が終わるところだった。

「厄介なのに捕まったなぁ。」

「美咲っていう子の父親とかは関係ないのかな。継父さんとはうまく行ってないんだよね？だとしたら大きくなってきた今、本当のお父さんに会いたくなるよね？」

「もうやめよ。
あいつの話やめた。」

きれいにたたまれた洗濯物を避けてまた膝枕。
テレビをつけるとニュースの時間だった。

港の近く、無人の倉庫で爆発事故のニュース。現場から伝えられてる画面の向こうはまだ火が残ってる。

「無人でよかったよね。」

「けが人無くてよかった。こんな時間に。呼び出されたくない。」

輸入雑貨の倉庫が燃えたとアナウンサーが伝えてる。

「あ、輸入雑貨っていえば…」

「美咲さんの父親の会社が輸入雑貨扱ってるって和希さんが…。」

「違うよな？
そんな会社いくつもある。」

「だよね。」

なんだか気になった。月も気になるみたいだった。
早く美咲のことなんて我が家からなくなればいいのに…。

「明日、ゆきちゃんとこ行くから。
将ちゃんお昼一緒できる？」

「内科？なんかあんのか？どっか具合悪い？」

リモコンでチャンネルを変えながら聞くと

「イチヂクたくさんもらったからゼリーとコンポート作ったら食べれたらと思って持ってってみるの。」

「そっか。
食べれるといいのにな。ゆきちゃんギリまで仕事するみたいだから。」

「うん、それも心配だよ。心配の種って無くならないね。」

「なぁ、うちもする？」

「何を？」

「子づくり。」

少し悲しそうな顔した月にしまったと思った。

「やっぱりほしい？」

優しい顔して俺の髪を撫でた月の手を握る。

「ごめん。
無理にほしくない。
月がいてくれたらいい。」

「謝らなくていいよ。結婚したらほしいって思うの当たり前。
直人に聞いてみるね。」

馬鹿だな、俺。
大切な人を傷つけた。

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