WILD DOCTORS 16

帰る場所・帰れない時 ページ43

「じゃあ部屋で待ってるよ。」

「ありがとう。」

健一郎さんの診察、将ちゃん心配して部屋の前まで送ってくれた。
ノックをしようとしたら

「月…」

呼び止められた。

「怒って無いから。
待ってるからな。」

✲✲✲

「健一郎さん、こないだは助けてくれてありがとう。」

「当たり前のこと言っただけだよ。
どうした？元気無い。
将吉、怒ってるのか？」

「ううん、怒ってないよ。
今も送ってくれた。」

「じゃあどした？」

「健一郎さんは、彼女さん作らないの？」

「作ろうと思ってできるもんじゃないだろ？」

「でも、思ってないと、出会ってもわからないよ。」

「出会えた人もいる。いい女だった。
初めて結婚を考えた。」

「…毬音さんは？」

「何もかも捨てるのがあちらに行く条件、だから会ってないよ。
それがあいつの幸せに繋がるから。」

「健一郎さんの順番はいつ来るの？」

「どういうこと？」

「いつも人の為に我慢してる。
私の為、毬音さんの為、お母様の為…いつになれば哲也先生に助けてもらった命を、健一郎さんが健一郎さんの為に使うの？」

「俺が俺の気持ちだけを思って動いたら、悲しむ人が出る。
だから俺の順番は来ない方がいい。
月子の診察だよ。
何を悩んでる？」

「健一郎さんも、結婚したらやっぱり子供欲しいよね？」

「わからない。
月子の時は欲しいとは思わなかった。
二人で、生きて、それで終わったらいいと思ってた。」

「欲しいって思う人が多いよね？」

「将吉？」

「心にはあるのかなぁって。
ごめんって事はそうだよね？」

「それで？」

「直人に聞いてみたのね、そしたらそれには減薬が必須で、私が熱で使う薬は妊娠の時は絶対にだめで…計画的に一年ぐらい断薬して妊娠して、産んでってするんだって。
直人は今の私には許可出せないって。
産んだ後、育てる事も考えないとって。
薬を減らしたら、痛みに耐えられ無いと思うからって。」

「俺も同じ意見。
将吉だってわかってる。
それでも、月子と結婚したんだ。」

「…うん。」

「月子…辛いか？」

「ううん。大丈夫。
ごめんね、変な事言った。」

「そうじゃないよ。ここではいい。
でも、言っただろ？
お前が帰って来る時は、二人で、全てを捨てなきゃならないって。
今は違うだろ？
将吉待ってるぞ。」

「うん、帰るね。」

心配顔した愛する人のところへ帰ろう。
人は思い出には帰れないのだから。

「将ちゃん、帰ろ。」

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