続４頭の龍が守る桜 ３

側仕えの立ち位置 ページ38

「綱紀、痛いとこ無い？」

「今は無いかな。」

「今日もリハビリ頑張ったね。
綱紀見てると、私も頑張ろって思える。」

「早く退院して、桜さんの側仕えに戻りたいから頑張ります。」

「私ね…とうしたらいいかな？
責任…どうしたら取れるのかな。
まだまだなんの力もないし…」

「じゃあ俺と付き合ってください。
俺の右手の代わりになってください。」

「え…？」

「冗談です。
そんな困った顔しないでくださいよ。
俺だって傷つきますから。
言ってみたかっただけです。
桜さんみたいな人が彼女だったらなぁって思っただけです。」

「綱紀…。」

「今までどおり看病して、リハビリ付き合ってください。
それで俺は十分です。」

「それは…当たり前にするから…。」

「じゃあ、俺が元気になって退院したら、１日だけデートして下さい。
どこ行くかはゆっくり考えます。」

「わかった。約束ね。」

「約束。
よかった、リハビリする楽しみができました。」

どこも痛くねーけど、心が痛いよ、桜さん。
でも、俺は桜さんの側にいたいから、側仕えでいいんです。
だって誰よりいつも近くにいれますからね。
いつか大樹さんと奥様みたいになれたら最高です。

＊＊＊＊＊

「将吉さん、少しお時間いいですか？」

「大樹か、珍しいな。座れよ。」

将吉さんはウイスキーを出してくれた。

「今日Aさんが…」

Aさんとの話を全部聞いてもらった。

「そっか。教えてくれてありがとな。
いつもAを守ってくれて、ほんとに感謝してる。
お前とは長い付き合いになった。
これからも頼むな。」

「俺はAさんと将吉さんに救ってもらったんで、最後まで務めさせてもらいますから。
ただ、今日のAさんはほんとに心配で…話さずにはいられませんでした。
本当は側仕えとしては失格です。」

主人の話を人に漏らすのは絶対にしてはいけないこと、普段なら絶対に話さない。
今までも話したことなんてない。

「いや、俺も今は完璧に見ててやれないから助かったよ。
また何かあったら教えて欲しいし、助けてくれ。」

「聞いてもらって良かったです。
少し落ち着きました。」

だけど…落ち着いちゃいけなかったんだ。
あんなに弱ってる自分の主人を、初めて見たのだから…。

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