続４頭の龍が守る桜 ３

亜嵐の思い ページ34

「Aさん、橘さんからの花束です。」

「あら？亜嵐君、退院したのね？
もういいの？」

「はい、長いことすみませんでした。
大樹と一緒に復帰です。」

「お花ありがとうって伝えてね。」

「Aさんが言ってあげたらきっと喜びます。」

「ううん、そうじゃないと思う。
いつか言ってた、裏切る女に用は無いって。
誤解だとしても、そう思わせてしまう所が私にあったから…。
もぅ、あの人に責められたくないの…。
この季節は、頭痛がよく出るからお薬はいつものところにあるからって。」

お互い思い合ってるのに…、かけ違えたボタンは戻せばいいのに。

「亜嵐君…哲也兄様知らない？
今朝、まだお会いしてなくて…どこにもいないの。」

「俺も会ってないですね。
気にしてますね。」

「うん、ありがとう。」

やっぱりどこかおかしいんだな…。
なんとか前みたいに、二人が同じ部屋で過ごしてくれたらいいのにな。

まだ結婚してない時に、岩田のマンションからAさんを助け出した時、Aさんを抱いたままリアシートでそのまま寝てろって言った時の橘さんの柔らかな笑顔が、俺はもう一度みたい。
あんな嬉しそうな、幸せそうな笑顔はあの時しか見てない。
橘さんは絶対にAさんが好きなんだ、特別なんだ。

匠さんや桜ちゃんが言うように、寝室でのことはお二人にしかわからない。
もしも、将吉さんが二人を離しているのがそのせいで、噂みたいにAさんが怯えているなら仕方ないけど…
このままだと、ほんとにお二人はもうだめになってしまう…。
橘さんは、Aさんがそばにいないと、仕事だっていつもよりだめになる。

前に聞いたことがある。
仕事で尖った神経は、Aさんの「おかえりなさい」
を聞いて、シャワーを浴びるとリセットされるって。
今、橘さんはどこで癒やされてリセットしているんだろう。
こんな情勢の時に、参謀が精神的に不安なことがあるなんて、組織的に見てもだめだろ。

花を送るくらいだから気持ちはあるんだ。
なんとかしたいんだ、俺は。
橘さんはいつも優しくて、俺には色々してくれた。
恩返ししたいっていつも思ってる。

「大樹！
俺に協力してくれないか？」

「何をだよ。
嫌な予感満載なんだけど？」

「あのな…」

「俺はやだ。
それで幸せなのは橘さんだけだ。
俺はAさんには笑ってて欲しいから。」

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