続４頭の龍が守る桜 ３

漢 ページ13

匠が上半身を起こせるようになったと聞いた。

「かずきさん…その顔…。」

「いい顔台無しだろ？
まあ、こんくらい殴られて、やっと周りが並んでくれる？」

「喧嘩？ですか？」

「んー、でもないんだけどね。
色々あってね。」

おじ様と同じくらい、学生の頃は喧嘩が強かったと聞いたことがある。
そのかずきさんが、こんなに顔を腫らしてる。
どれだけの喧嘩だったんだろう…。
匠もこんな風に戦うのかな？
あのきれいな顔した優しい匠が？
違和感いっぱいだ。

＊＊＊＊＊

「父様、なぜ動かないの？
母様きっともう…」

「わかってる…。」

「父様！色々考えてるのはわかるし、組織のことや、おじ様のこと、桜や俺らのことわかるよ、でも…
男としてみたら、今の父様は最低だよ！
母様のこと愛してないのかよ、大切じゃないのかよ、男だろ！見損なったよ！」

「軽蔑しても構わない。
父様自身もそう思う。」

Aのことだ…もう壊れているかもしれない。
それも覚悟してあいつは岩田の所へ行ったんだ。

あのパーティーの夜、数秒視線があった。
あれが最後だったのかもしれない。

ここ数日、今まで無かったのに哲也が夢に出てくる。
何も話すわけでもない、ただ怒りのこもった目で俺を見てる。
あんな目を見たことが無い。
きっと俺の事を怒っているんだろうな…

なぜもっと大切にしなかった
なぜくだらない嫉妬でAを責めた
なぜ俺を疑った
お前が１番知ってるくせに
なぜあいつを岩田のとこへ行かせた
お前なんかに任せるんじゃなかったよ

ものすごく苦しくて、謝っても謝っても許してもらえなくて、息が止まりそうになって目が覚める
仏壇にも手を合わせた。
お墓参りにも行った。
でも、この嫌な感じが取れない。

「父様、頭じゃなくてハートで考えてよ！男だろ！
俺なら桜を行かせたりしないよ！」

「踊人？桜を好きなのか？」

「好きだよ、ずっと。
だからちゃんと告白した。
まだどうなったとかこうだとか言えないけど、俺の気持ちは決まってる。」

踊人…真っ直ぐな気持ち。
俺は、こんな風にまっすぐ、何もかも捨ててAを愛したことがあっただろうか

「もういいよ！
父様なんかに頼まない！」
．
．
．
「おじ様！母様を救い出してよ！」

「待て、踊人。
下手に動くと、愁平の邪魔になるかもしれないんだ。」

「愁平さんの？」

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