続４頭の龍が守る桜 ３

羽のない鳥 ページ11

しばらくそうして話していたけれど、
それで終わるわけもなく…

「先に入る？それとも俺が先？
一緒に入るのもいいよ。」

髪を撫でられて、それでも頭の中では色々考えていた。

「お先にどうぞ。」

「じゃあ、お先に。」

無理強いしないのは、女性に慣れているから…このルックスならいくらでも女性は寄ってくるだろう。
好き好んで人妻なんて相手にしなくてもいいのに…征服欲を満たしたいから？

政治家の浮気って若い女の子とやらしいおじさんのイメージなのに。
きれいな顔のきれいな肌の鍛えられた体の持ち主なんだものね。

何を約束させよう…。
何が一番将兄様の助けになるかしら。
どうせ羽を散らすなら、一番兄様の為になりたい。
将兄様は、父様、アキラ兄様、哲也兄様の三人がいなくなってからも、ずっと一緒に生きてくださった。
守ってくださった。

だから恩返しはしたい。
ありがとうは伝えたい。

「お先に。
ゆっくりどうぞ。
ひとりで大丈夫？
すみれを使って。
きちんとできるから。」

すみれちゃんは介護も学んだのか、入浴も手伝ってくれた。
何も感じない足が、今になってもがれた羽のように思えた。
少しでも長くと思ったけど、すみれちゃんも待ってくれているし、そうも行かなかった。
バスローブを羽織って髪を乾かし、肌を整えて薄くメイクをした。

「岩田様は寝室に。
では私はこれで休ませて頂きます。
おやすみなさいませ。」

「おやすみなさい。
色々ありがとう、すみれちゃん。
また明日もお願いします。」

パタンと扉を締めたすみれちゃんの部屋は、寝室から一番遠い部屋。
ため息をひとつついて寝室に入った。
無言でこちらを見ると、抱き上げてベッドへそっと寝かされた。

「やっとだね。
もういい加減覚悟は決まった？」

ごめんなさい…イチさん。
あなた以外の人が岩田なんて思わなかった。
あなた以外に触れられるなら哲也兄様がいい。

「お願いしてもいいですか？」

「こんな時のおねだり？ずるいね。
聞くしかないじゃん？言ってみて。」

「たとえば兄が負けても、あの屋敷とうちの家族だけはあそこにとどめて頂きたいの。
お願いしてもいい？」

「そんな時だけかわいい言い方、ずるいな。
でも、それは片岡の決めることだけど…いいよ、これからAがずっと僕といるなら叶えてあげる。」

「私の願いはそれだけ。」

それから私は白い竜に巻き取られて羽をもがれた鳥になった。
かごの中にいて、何もしない、考えないそんな鳥。

一枚目の壁陥落→←膝枕

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