それでもお兄ちゃん 4

昼の訪問者 ページ35

その日は健一もいて、二人でのんびりしてた。
しばらく夜のガチャガチャもなくて、安心してたら来たの、お手紙の方。
ほんとに来てしまった。
健一に話しても名前を見て

「如月 砂流恵(さなえ)さんねぇ？
　良平の言うようにイタズラ？
　来ないよきっと。」

なんて言ってた。
門の外に立ってる女性を見て

「あぁ。
　如月ね、はいはい。」

なんて思い出したみたい。
ちょっとやだ。

「如月砂流恵です。
　お手紙出したものです。」

サラサラのショートカットが似合う素敵な人。
キリッとした瞳の強そうな方。

「久しぶりだね、
　あまり変わらない。」

懐かしそうに微笑む健一を横目に珈琲と頂いたクッキーを出した。

「今も時々走るの、マラソン。」

「そうなんだ。」

スカートから覗く足は筋肉がきれいについている。
この人と健一がおつきあいしてた。
私の知らない健一を知ってる人…。

「毎日走られてるんですか？」

私もいますのアピールで話に入ってみたけど…

「えぇ。」

で終わり…？

「健一郎君は今は？」

「公認会計士してるんだ。」

「私もなの。」

と名刺を出した。
健一郎君って呼んでたんだ…。
二人の話ははずんでる。
健一のおバカ。

「でも、意外だったわ。
健一郎君の付き合ってた女性たちとは奥様全然違うから。」

そうなんだ…。

「明るくて、元気で、強くて、何かにがんばってる自立した女性が好きって話してたもんね。
実際そういう人とお付き合いしてたよね？」

「そうだっけ？
オレ、女の子の趣味は変わってないよ。
奥さんみたいな人。」

「うそ？
じゃあ本命さんとは反対の女の子と遊んでたんだ。
満たしてたわけだ？」

明るくて…元気で強くて…自立した女性…。
ネガティブで病気がちで弱くて甘えてる私。
健一はどうして私と付き合ったの？
全然好みと違うじゃない…。
私が待ってた頃こういう人と恋をしてたの？

「で？要件は？
アポ無しで来るなんて…。
それに同じ仕事してないよね？
同じ大学で同じ学年、少ない女子で同じ仕事なら伝わらないわけないもん。」

「さすが健一郎君だね。
そういうとこ変わらないね。
アポは手紙に書いたもの。
奥さんが見たかっただけよ。
どんな人が幸せにしてもらったのか知りたかったの。」

背筋の伸びたその人の目はとても力強い。
自身に満ちた顔。

「じゃあ用は済んだよね？
俺も話しがある。
夜中に来るのやめにしない？」

夜の侵入未遂さん→←おいたの代償？

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