それでもお兄ちゃん 4

絵美ちゃん ページ19

啓兄のお店はいろんな年代の人が来る。
ランチはご近所のひとり暮らしのおじいちゃん達がやってきて、お店に絵美ちゃんがいないと啓兄にいないのかってお小事を言う。
絵美ちゃんが出てくとおじさん達はおとなしくご飯を食べる。

絵美ちゃんはすごくて、常連のお客様一人ひとりの好みやその人の話した事なんかを覚えていて、お誕生日には何かをおまけしたり、ご飯の量や、好き嫌い、どのメニューが好きか、仕事、他にも。
それがお客様には特別感となっていいお店になる。
動きもテキパキしてて、啓兄はほとんど店に出なくても厨房で料理を作ることに集中できる。

すごいな、絵美ちゃん。
みおちゃんも普段は愁君の仕事を手伝っている。
陽ちゃんは八百屋さんの奥さん。
みんなすごいな。

私は健一さんに甘えてるだけでなんにもしてない。いいのかなぁ。
ある日、そんな不安を絵美ちゃんに話したら、私は母がなくなる前に病気で寝ていた頃から看病と、家事をしてたらしい。
母がなくなってからもその仕事はやらざるを得なくて、学生と主婦をしてたから今はゆっくりしてればいいと絵美ちゃんは言ってくれた。

みおちゃんの赤ちゃんへのオクルミにはキナリのオーガニックコットンの生地を使って、同じ色の糸で手縫いでキルティングをして丈夫にしようとチクチクしてる。
ミシンもいいけど、せっかくなら手縫いの暖かさを赤ちゃんに伝えたい。
一針一針チクチクするのは大好きな仕事で、みおちゃんに感謝してる。

きっと、亡くなった母さんもこうして孫に作ってあげたかったはず。
私を通して母もチクチク縫っていると思ってる。

過去の端っこ→←不安

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す