それでもお兄ちゃん 4

不安 ページ18

あの夜、テラスの扉を開けようとしたのは誰だったんだろう。
月に言われて寝室のカーテンを開けた時、逃げていく影が見えた。
怯えるからいなかったと言ったけど…。
だからあの日は客間で寝た。

あれから業者に頼んですぐに扉には人が入れないよう外側に格子の扉をつけた。
セキュリティ会社とも契約した。
今は一緒に寝てるから少しは安心してくれてるみたいだけど…一度ぐっすり眠らせてあげたい。

まだ狼さんにはなってない。
また前みたいに甘えてくれるといいなって思ってる。

あの逃げていった影は岩田とは違う。
だけど母さんはまだ塀の中だ。
たとしたら一体誰だ？
みんなに迷惑をかけるの気が引けて、出かけるときには啓司のところに月を預けることにした。

「鍵締めておくから平気だよ。」

なんで言ってるけど、心配で気になって仕事にならないから頼むと言って説得した。

月の性格をよく知ってるから、絵美さんは瑞樹が大変だから双子をみて欲しいとうまく仕事を作ってくれて、みおちゃんもオクルミを作ってほしいと仕事を作ってくれたのでおとなしく道具を持って通っている。
啓司も絵美さんに仕事を頼むとき、月がいることで頼みやすいらしく、絵美じゃないとできないこともあるからと喜んでくれた。

あれから気になって時々父親の所へ見に行ってるけど…心配だ。
ひとりで暮らすにはあの家は大きいし、コンビニばかりでは高齢者には余計にきついから。
何も覚えていない月は、父は母と死別したと思いこんでいて、

「お父様にここに来て頂いたら？」

なんて言ってくれる…。
だけどそんなことできる訳もなく。
記憶が戻った時の俺に対する月の気持ちがどうなのかを心配してる。
ほんとに月を失ってしまう日が来るかもしれないって。

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