それでもお兄ちゃん 2

隣のはなし。最後の望み ページ37

流石にお式は息子夫婦が仕切った。
下町のこのあたりではまだまだ自宅で、隣近所協力しあって式をやる家が殆ど。
でも、夕方一枚のチラシが各家のポストに配られた。
最近町外れにできたセレモニーホールでの式で、商店街からはバスが出た。
お年寄りが多いから

「どうしたらいいの？」

と我が家にも何人かのおばちゃんが聞きに来たりもした。
バスから溢れた人も多く、その旨を式場に連絡すると、一台しか予定されていないので
あとは各人でと施主様が…と電話を受けた人に言われ…

困った挙げ句、けいたんを始め直人さん達商店街の若手？組が車に分乗させ送迎した。
受付も何もかも業者任せ、今時それも多いけど最後のご挨拶まで業者の代読は寂しかった。

私達世代なら当たり前のことも、お年を召された方には許せないこともある。
それを埋めるのは、たったひとつの言葉や行動で、それが全くなかったから息子はだめなやつと言われ続ける。

子供の頃からお互いを知るけいたん達は、あのおじちゃんやおばちゃんの息子なのになと
悲しんだ。

「でも、息子にしては年齢が？」

と聞いたら

「ホントは祖父母なんだよ。
あいつの母ちゃん、つまり婆ちゃんの娘が産んだ子でさ、父親には認知されなくて…。
まだ若かったから、親の籍に入れたらしいよ。」

ってことだった。
金おばけにも伝えて、健一さんに紹介された弁護士さん立会のもと封筒を開けたら、お婆ちゃんからの手紙が息子宛、けいたんと私宛、他にも数通入っていた。

それから遺言として、この土地をできればけいたんに買って欲しい。
その希望金額が書かれてあって、普通ならありえないくらいの低価格な数字が並んでいて、それを息子へと書かれていた。
その条件を飲まないなら、息子にはここの権利等は譲らず市へ寄付するとなっていた。
貯金の内訳にも寄付は入っていた。
ただしけいたんの意思に沿って断るのは自由となっていた。

手紙には私達がいてくれてうちの双子がなついてくれてどれだけ心強く最後を迎えられたかという感謝の気持ちがたくさん書かれていた。
けいたんは

「なんにもしてねーのに。」

って泣いた。
お婆ちゃん、また一人息子をお願いしたかったのにと手を合わせた。

しばらくして、

｢兄貴に相談してくる。｣

とでかけたけいたんは帰ってきて

「隣買わせで貰うわ。」

ボツンと言った。

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