WILD DOCTORＳ

大樹先生の誓い ページ6

「空飛君、今夜一晩病院でお預かりして
もいいですか？」

付き添って来た母親に告げたら、
顔色が変わった。

「どうしてですか？
　少しお腹が痛いだけなんです。
　痛み止め貰えればいいので。」

「病名もついてないのに？
　空飛君身体中怪我がありますね、
あれは？」
「毎日お外で走り回るから転んで、
とにかく暴れん坊なんで。」

そんな傷じゃない。
母親からじゃなく、父親からの虐待か…
カルテを見ると…父親だな。
最近は内縁の夫なんていうのが事件を
起こすから。

「この子もいて付き添いもできません
から…。」

自分の子供だろ？
普通ならしっかり調べて欲しいだろ？

「付き添いは必要ないので。
　ナースも子供の扱いには慣れた者
ばかりですから。」
「あの…、でも…、父親に確認取らないと
いけなくて…」

「お子さんが一大事の時に
そんな悠長なことでいいんですか？
　お母さん、お話伺えますか？」
「わかりました。入院させます。」

オロオロと視線が定まらない。
様子がおかしい。

「では、ナースに従って入院の手続きを
お願いします。
入院中には必要な検査や治療を
行いますので、同意書にサインをして
下さい。」

個室で見ていてもらう方がいいな。
連れて行かれてもマズイ。
ひとりの男の子を思い出す。
まだここに来て三ヶ月位の頃、
外来でその子はやってきた。

明らかに栄養失調、やせ細った身体で
ぐったりと母親に抱かれて来た。
ネグレクト？疑って入院を進めると、
母親は拒んだ。

それでも強く言うと、父親と名乗る男が受付で大声を出し始め、他の患者さんや子供達が怯えて泣き始めた。
スグに黒木先生が場を収めて下さったけど、その子は次の日来なかった。

来ると約束して帰った親は、アパートからいなくなり、その子はその部屋で亡くなって、置き去りにされていた。

悔やんでも悔やみきれない。
名ばかりの親でも親は親。
その頃の決まりでは助けられなかった。
そういう事件が続いて、子供の命を少しは救えるようになったけど、それでも、虐待死は減らない。

死んでもなお、虐待されるように置き去りなんて…
何の罪があるって言うんだ…
あんな子を二度と出したくない。
その子に誓って今日まで来た。
だから空飛君は絶対助けたい。

君は天使→←虐待？

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す