雌ライオンはひとりでいい 2

王子の面会 ページ8

葛西さんの面会…来てみたけど
多分断られるだろな。
良平先生でだめだったのに
俺ならいいってわけないもんな。

将吉先生からは明日の午後には
出勤して面会に来るって
ことだったけど…ホントは今日
面会の約束になってるからな。
オレ、刑事事件は苦手分野。
くそ、なんでAいねーの？
助けてくれよ。
たーくんかわいそうじゃね？

「今市さん、面会できそう？」
「あぁ、田崎先生。
　今日は落ち着いてますよ。
　刃物等も調べたので大丈夫。」
「じゃあ、立会お願いします。」

中に入ると葛西さんは特に
何ということもなく俺を見た。
「田崎敬浩といいます。
　八木先生の代理で来ました。
　あの事務所やってます。」
「ふぅん、お坊っちゃん？」
「一応そんな風に言われてるけど
　そうは思ってないです。」

「あの女の先生は？
　結局途中で投げ出したの？」
「彼女はお子さんのことで
　お休みしてます。
　うちとしても、お子さんのこと
　は、男女関係なく大切にして
　もらいたい考えなんで。」
「いい事務所だね。」

「昨日八木先生にも男の子が
　生まれたんですよ。
　4人女の子でようやくの5番目
　先生にはたまらなく可愛い息子
　だろうね。」
「それじゃあ…」
「だから昨日は僕がお休みして
　もらったんだけど、葛西さんに
　とっては裏切りに感じさせて
　しまったようで…すみません。」
「八木先生の怪我は？」
「顔と右手を縫いました。」
「悪いことしたわね。」

「どうして裏切りだと？」
「昨日は自分が自分でコントロール
　できてなくて…全てのことに
　苛立ってしまってて…
　凄く荒々しい気持ちになっていて
　ごめんなさい。」
「前にもそんなことが？」
「時々…滅多にないけど…。」
「その状態が何がきっかけで
　起こるのかわかります？」
「いえ…わかりません。」

「娘さんに対して日頃から
　思っていたり、言ったりして
　いたことで、一番多く言って
　いたことは？」
「人には思いやりを持って接して
　欲しいということ。
　父親が不在なことが多くて、
　怖い人がいないもので…
　小さな女王様みたいになる
　ことも多かったので、
　それでは良くないから
　とそれをよく言ってました。」
そんなふうに育てても
うまく行かないことも
あるんだよな…

「明日は八木先生がみえる
　そうなので
　色々話してみてください。
　とても優秀な先生ですから。」
「来てもらえるんですか？
　あんな事をしてしまったのに。」
「はい。」

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