雌ライオンはひとりでいい 2

ここにいて… ページ42

「よく出してもらえたね。」
ほら、来てくれた。

「いいから、寝てて。
　熱高いよ…測ってみて。」
体温計をくれる手を少し握る
「あ、ごめん。」
を
脱衣所からタオルを持ってくる。

「病院行こう。付き添うから。」
「寝てたい…動きたくない。」

お粥を作ってる。久々のエプロン姿料理の匂い、卵粥かな…。
「少し冷めるまでにお着替えして
　蒸しタオル作ったから汗拭いて
　着替えたら呼んで。」
さすがにこれは甘えちゃ警戒
されるよな…。

「じゃあお粥食べてね。」
「ふぅふぅしてくれる？
　ってごめん、熱で変だ。」
恥ずかしい…こういうのは哲也の
ほうが得意そう…

「はい、じゃああーんして」
うそ？マジでいいの？
結婚してる時もなかったよ。
「どうしたの？」
「照れるけど嬉しいね、これ。」

「食べ終わったらお薬ね。
　置いていくから朝晩一回ん
　2錠ずつ飲んで。」
「お水、あとスポドリと…
　アイスクリームもあるから。」

横になる時に手伝ってくれた。
思わず抱きしめた。
「健一郎さん…はなして。」
「もう帰るんでしょ？
　もう少しいてよ…不安なんだ」
そう言って一度放す。
そして目を閉じた。
　
「お熱のせいだよね…
　びっくりしたぁ…。」
ため息ついてから冷えピタ
してくれる。
冗談抜きでフラフラしてる…
冷たくて気持ちいい。

立ち上がろうとするAの
指をそっと掴んだ。
「もう少し…ココにいて…。」
あえて目は閉じたまま…

「健一郎さん、藤木亜紀さん
　っていう方知ってる？」
どこかで聞いた事のあるような…
「どうした？」

「こないだからね、その人が
　しょっちゅううちに来てね…
　いつもならリビングで話すのに
　その人だけは診療所で話すの。
　哲也君、亜紀って呼んでてね、
　見つめ合って微笑むの…。」
震えてる…A…

「でもな…哲也の特別は…
　お前だよ。ひまとふたり大切に
　大切にしてる。どの男から
　見てもそう思うよ。大丈夫。」
「わかってるの…これがくだらない
　嫉妬ってこと。
　だけどあの人はなんか嫌なの。」

あ、思い出した。大学のときの
サークルにいたわ。
哲也が好きで告白して少しだけ
付き合ってたけど、別れた。
でもプライドの高い子で、哲也が
別れ話持ち出したんだけど、
自分から別れたことにしちゃった
んだよな、あの子だ藤木亜紀。
言わないほうがいいよな。
こんなにも不安にさせる。

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