雌ライオンはひとりでいい 2

突き放すという愛 ページ23

「でもさ、ここは突き放すべき
　だよな？思わない？」

哲也さんに言われて頷いた。
大先生に言われたものの腑に
落ちないと言い出した哲也さん。

「ほんとに凪や王子が可愛いなら
　ここは親父は出ちゃだめだろ？
　二人共しっかり叱ってあとは
　自分で考えろって。
　先回りして将吉先生やお前に
　来てちゃだめだろ？甘くない？

　お前ひまにするか？大人に
　なって働いてて犯罪犯して
　被害者には謝罪だけしてさ
　それは言わずに突き放さない？」

うーん、確かに甘やかすことは
できない。

「俺なら自分は突き放して、お前に
　フォローさせるかな？」

うーん…確かに。

「俺的にはひまにしたことは絶対
　許せない。もちろんお前もだよ。
　でもお前は大人で考えも柵も
　あるたろう、でもひまは違う。
　今は怖いだけでもこの記憶を
　持って成長する。
　その意味を知ったときまた
　トラウマは再発する。
　娘が一生それ持ってく…
　堪んない。」

考え込んでしまった私に哲也さんは
ふって笑って
「いじめてんじゃないよ？」
肘をついてみてる。
「解ってる、考えちゃっただけ。」
「将吉先生と話してみ？
　白獅子は黒豹と共に歩くんだろ？
　先生ならどういうか。」

白獅子は医者と歩くんだけどね。
誰よりそばで見守ってくれる。

将吉先生は
「もし、俺があそこをやめて
　事務所を持つって言ったら
　お前来てくれる？」
そう聞いた。
きっと先生はそれくらいの覚悟で
敬浩君の目を覚まそうとしてる。
突き放してそれでも気づかない
なら袂を分かつつもりなんだ。
でもそれが敬浩君のためなら…
「ついていきますよ、
　将吉先生に。」
「頼むな。」
将吉先生は意味ありげに笑って
私の肩をポンポンと叩いた。

敬浩君、気づいて。
みんなはあなたを思ってる。

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