雌ライオンはひとりでいい 2

目が曇る ページ20

「何故将吉さんに頼まない？」
そう聞いた。確かに将吉さんに
とってAは特別かもしれない。
だけど「筋を通す」ことは時に
とても大切だ。
将吉さんが断っての俺なら話は
わかる。しかしいきなり俺じゃ俺と
将吉さんの間にできる僅かな溝を
王子が考えないなんて…
らしくないぞ、王子。

「今夜呑み付き合って…。」
「じゃあいつものとこで７時。」

「いらっしゃい。こっちどお？」
カウンターの端が緩やかに曲がって
いる、曲がった側はイスが2つ。
話をするにはベスト。

「いい日本酒入ったよ。」
笑顔のマスター啓司さん。
王子を見ると頷いたから
「じゃそれ、2つね。」
マスターはワイングラスを出す。
濃い青の瓶から注がれる液体は
少し黄金色がかって美しい。

とあるタレントが作ったという
その酒はその香りが鼻に抜ける…
程よい酸味のあるでもちゃんと日本酒なのにワイングラス正解。
飲みすぎる系だ。

「良平さんさ、やっぱり俺
　おかしいと思う？間違ってる？」
「そういう時は理由がある。
　ただ間違いは直した方がいい。
　マスターなんか作って
　腹減ってる。」
「はいよ。」

「オレ、黒豹と白獅子失うかも。」
王子はワイングラスを揺らして
香りを嗅ぐ…その横顔もカッコイイ。
「上に立つ人間としての判断なら
　大きく間違いだと思う。
　刑事訴訟受けれなくなる。
　あの二人に勝てるやつそうは
　いないと思う。他の人間を
　入れれば客は減る。」
「だよな…。」
「だけど王子があの二人を
　わかってて手放す何てすげー
　理由があるのはわかる。」

料理が来た焼きなすやカマンベール
おろしステーキ、2杯目を頼んだ。
次は二人共バーボン。

「凪さ…実は妹なんだわ。」
「どういうこと？」
「異母妹でさ。って言っても親父
　の裏切りとかじゃゃないよ。
　親父は戸籍上の父親。で
　子どものいない親父の弟夫婦に
　養子に出したの。」

「大先生が母親を助けた？」
「レイブ…されてできた子なの。
　その女の人は、堕ろそうと
　したらしくて、でも父親の欄
　埋めれなくて親父がってのが
　縁の始まりらしくて。」
なんか大先生らしいな…。

「でも台上まで登ってみたものの
　待合室で見た可愛い赤ちゃんを
　思い出してできなくて…」
煙草に火をつけた。
すっと灰皿が出てくる。

「その母親が凪産む時に
　亡くなって、でもうちの母親も
　受け入れられなくて。」
受け入れられんよな…普通は。

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