雌ライオンはひとりでいい 2

ひまがいない！ ページ2

病院前からタクシーに乗り
「パパにおみやげを買う！」
ときかないひまに負けて
デパートに寄ることにした。

ちょうどお昼時、
デパート内のカフェでランチ
しようと中へ入った。

「何にしましょう？」
ボーイさんがひまに注文を
聞いてくれると
「おれんじじゅーちゅくだしゃい」
「と、オムライスと私は…
　アイスコーヒー下さい。」
「かしこまりました。」

ひまはオムライスの半分以上を
平らげてる。大食漢だ。
「ひま、お腹痛くならない？」
「おねーさんだからへいきよ。」
心配だなぁ…。
「ここのお店ね、パパとママが
　初めておデートしたお店なの。」
「ほんとー？
　しゅきって言ったの？」
少し違うよひまさん。

「おもちゃのとこ行く。」
「おねーさんなのに？」
「しるばにはみりー買うの。」
シルバニアファミリーね。
「ぱぱいいって言ったよ。
　お電話で聞いてみなしゃい。」
聞いてみなしゃいって…。
「じゃあ買ったら帰るからね！」
デパート来るとおもちゃ
買ってもらえると思ってる、
哲也さんのせいだ。

「まーまはけちんぼねぇ。
　ぱぱやりょーへーおじちゃまや
　たーくんはすぐに買って
　くれるのに。」
「ままは買いません。」
悪い大人たちだわ。
今度言わなきゃ。

帰ろうとタクシー乗り場へ行くと
並んでる。
仕方なくたくさんの荷物を義手側
で持って左手にひまをの手を
しっかり握って並んだ。

あと前のおばぁさんが乗ったら
と思っているとおばぁさん
足取りが危うい。
そっと手を添えて手伝うと…
ひま！ひまがいない！
あたりを見回すとひまが
知らない男の人に手を引かれて
歩いてる。
「ひま！」
ひまの手を取り
「母親です。娘がすみません。」
と念の為謝る。騒ぎにすると
怖い人かもしれない。
「気をつけないと連れて行くよ。」
帽子を目深に被ったその人は
声だけで答えると行ってしまった。

「ひま、知らない人について
　いったらだめじゃない。
　いつも言ってるでしょ？」
「あの人知ってる匂いがした。
　だからついてった。」
「どんな匂い？」
「いい匂い。」

誰かと同じ香水でも使ってた
のかしら…。
やっぱりしばらくはうちを
でちゃだめだ…。怖い想いをした。

「A？ひまちゃん？」
声に顔を上げると健一郎さん
だった。

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