雌ライオンはひとりでいい 1

健一郎さんとひま ページ44

熱も下がってしばらくすると、哲也さんが健一郎さんをうちに誘おうと思うって言い出した。
ひまのこともあるし、少し戸惑っていると

「いつかは話す、いつかはばれる。
周りの大人が変に隠すと余計勘ぐる。ひまは頭がいい。」

確かに、ひとりっ子で周りが大人ばかりだから、少しおませさんなところはある。

「あえて言うことはしなくていいけど、オレは別に隠す気も無いんだよね。
ひまとはそのくらい父娘だと俺は思ってる。」

哲也さんの言うのもわかるから招待することにした。

その日、昼前に健一郎さんはやってきた。
何度か会ってるひまは、玄関を開けてお出迎え

「寺辻のおじちゃまだ。」

膝まづいてひまの目線に合わせ

「こんにちはひまちゃん。」

優しい笑顔の健一郎さんは、ひまに大きなくまのぬいぐるみを渡してる。

「こっちがひまたんのおうち」

ひまはくまを抱えて案内してる。

「ひま、ありがとうできたの？」

「まーま、見て！くまちゃん。
　ありがとしたよ。」

「いらっしゃい、どうぞ。」

部屋に入ってきた健一郎さんは

「素敵なところだね。」

って言うと花束をくれた。
懐かしい…大輪のカサブランカ、哲也さんには日本酒。

「冷やしておくと美味しいから。
　哲也は？」

「さっきね、お子さんがお腹痛くなって急患が来て、今診てるから待ってて。」

お休みでも来たら診てあげる。
ここでは子供やお年寄りには年中対応。
夜中も駆けつける。

「おじちゃま、ひまね、ひとりでねんねするの、だからくまちゃんとねんねするね。」

「一人で寝てるの？
ひまちゃん偉いなぁ。」

話してるふたりはホントは親子。

「おじちゃまも、まーまのお仕事の人？」

「パパのお友達だよ。」

「そうなの？
たーくんやけんちゃや、しょーきちせんしぇは知ってる？
ひまね、しょーきちせんしぇ大好きよ、でもパパのお嫁さんになるから困ってるの。」

困ってるんだ…それパパが聞いたら大変だよ、ひま。
将吉先生にまたいらないライバル心を燃やしそうだよ。
それからけんちゃじゃなくせめてけんちゃん先生ね。
心で思いながら食事の準備。

「でも、パパのお嫁さんは、まま。
　将吉先生のお嫁さんは知ってる？」

「うん、ふたごのおねーちゃんのままがしよーきちせんしぇのお嫁さんだよ。
だからあとはたーくんしかいないけどひま嫌なのね。」

ぷ、敬浩君振られてる。
二人の話は続いてる。

二人の父と娘→←野替刑事

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す